大地震や気象変動による文化財の短期・長期的な劣化の進行を捉えるためには周辺の微気象環境データをリアルタイムかつ継続的に収集する必要がある。石造遺跡においては、乾湿繰返し、凍結融解による風化、劣化予測が緊急の課題である。屋内美術品に着目すると、繰り返される入館者の体温、発汗による温湿度の変動、或いは収蔵庫内の温湿度変動など、環境によっては劣化、損傷の危険性にさらされる危険性を有する。これらの環境条件を観測するためにロガー機能を有する温湿度計を用いるのが一般的であるが、実現象を多点で面的にかつリアルタイムに観測することが難しいという現状がある。そこで、本研究ではこの課題を解決するために、無線センサネットワーク技術による、文化財保存のための環境観測用スマートダストを開発することとした。今年度の研究課題と成果は次の通りである。 研究課題:屋外文化財向け環境観測用スマートダストおよび観測システムの改良 H25年度に臼杵石仏群に試験導入した観測システムは、無線通信の安定性に課題が確認された。また遠隔からリアルタイム観測が可能なソフトウェアのプロトタイプを開発したが、複数のユーザーが同時に閲覧できないなど、課題が残された。そこで今年度はこれらの課題を解決するために、計測機の設計変更を行い、無線通信性能の改善とデータロガー機能も追加した新たなスマートダストを開発した。また無線センサネットワークによる収集された観測データは基地局を介してクラウド上に保管される仕組みに改良し、WEB上で複数名が同時に閲覧できるシステムを開発した。
|