研究課題/領域番号 |
24650591
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
河合 淳 金沢工業大学, 先端電子技術応用研究所, 教授 (10468978)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 超伝導磁力計 / 青銅 / 磁場 / スキャン / マッピング |
研究概要 |
24年度は超伝導磁力計、XYステージ、駆動回路、ガントリなどのコンポーネントの設計、試作、改良を行った。超伝導磁力計のセンサ部分であるSQUIDグラジオメータは、ミリメートルオーダの空間分解能を考慮して、ベースライン3mm、検出コイルの大きさを1.5mmに設計し、薄膜プロセスを用いて作製した。また、このセンサを既存のクライオスタットに装着するためのセンサプローブを試作した。クライオスタットを支えるガントリはアルミ製のものを自作した。センサ駆動回路は既存のものに直流オフセット調整機能を付加し、SQUIDのフィードバックコイルを通じてキャンセルを行う動作を確認した。これらを組み合わせた計測システムの基本特性を検証した結果、磁場分解能は目標の0.05pT/√Hzを上回る0.03pT/√Hzを達成することができた。他方、サンプルをスキャンするためのXYステージは既存のものに非磁性の樹脂製簡易XYテーブルを追加し、サンプルとモータ間の距離を遠ざけることでモータのノイズの低減を図った。その結果、バックグラウンドノイズとして±20pT(帯域:DC~6Hz)以下まで低減することができ、有意な計測が可能となった。この試作システムを用いて、1mmφの大きさのコピートナーが作る磁場をスキャンし、±10nT程度の磁場のマッピングを行うことができた。この結果を計算結果と比較し、磁場パターンが一致することを確認した。さらに、市販の青銅板の残留磁場を計測し、裁断時の不純物による磁場の模様をマッピングすることができた。また、次年度に向けて磁場印加用超伝導コイルを集積化したSQUIDグラジオメータを新たに設計し、フォトマスクを作製した。振動計測に必要な部材としては超音波スピーカーを調達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計測システムの試作/検証に関しては計画通りに進んでいる。一方、世界的な液体ヘリウムの供給事情の悪化により、予定していた量の液体ヘリウムが確保できない状況になったため、実験時期および回数を変更せざるを得なくなった。具体的には、液体ヘリウムが調達可能な時期と量に合わせて、システムの基礎特性の検証および次年度に予定していた青銅サンプルの計測を前倒しで行った。一方、振動変調システムや着磁/消磁装置の試作は次年度に行うこととした。しかしながら2年間を通じた研究計画として致命的な影響はなく、達成度としては概ね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
液体ヘリウムの供給事情は25年度の6月には改善するとの予想である。今年度は改めて振動変調システムの試作および着磁/消磁手法の検討を行いながら、銅鏡サンプルの残留磁場計測/変調磁場計測を行う予定である。また、計測結果を専門家に示して意見を求めるともに、実物の銅鏡の計測トライアルに関して協力を仰ぐ予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
磁場発生用コイルシステムの試作および振動変調システムの完成に向けて必要な費用を確保した。また、銅鏡サンプル計測実験に必要な液体ヘリウム代、および学会発表、専門家の訪問に関する出張費を計上した。
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