本研究は、高湿度環境下にある古墳壁画等の文化財の壁面含水量とその時間的変化を測定するための非接触による手法を開発し、そのシステムの有効性を評価することを目的とする。壁面の含水量及びその時間変動を非接触な手法により調べるために、2種類の測定原理に基づいた自動計測システムの具体的な方法を考案し、開発を進めてきた。 ひとつ目の方法は調査対象となる壁面の前に複数個の温湿度測定器を設置して、温度と相対湿度から計算される絶対水分量の勾配を調べることにより、壁面における水分の時間変動を調べる方法である。ここでは、超小型温湿度データロガーを利用することにより、簡便さと小型さを追求し、現場でも活用することが容易な測定システムを構築した。この測定システムの評価のために、装飾古墳を模したレプリカ石材表面における水分の蒸発量の測定を実施した。その結果、温度の上昇に起因する石材表面における水分の蒸発を検出することができた。 さらに、高湿度環境下において温湿度データロガーよりも堅牢であるセンサーを組み込んだ測定システムのプロトタイプを製作した。凝灰岩の試料を用いた基礎実験により、この測定システムの動作の評価を行った。 ふたつ目の方法は、小型の赤外線照射装置と赤外線センサーを組み合わせて、赤外線の反射率を観測することにより、壁面における水分量の時間変動を調べる測定方法である。このような原理の測定システムを製作し、動作の評価をするための基礎実験を行った。
|