研究課題/領域番号 |
24650595
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 文夫 東京大学, 総合研究博物館, 特任准教授 (20447353)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 文化支援 / 人間連携 / 資源共有 / 空間創出 / 博物館 / 被災地 |
研究概要 |
東日本大震災の被災地における中長期的な地域再生のための「文化支援」の研究調査を行った。本研究を進める前提として、東京大学総合研究博物館は被災した岩手県上閉伊郡大槌町に「大槌文化ハウス」(仮称)をつくるプロジェクトを民間企業の協力を得て進めている。当初は仮設住宅地の一角に一戸建ての小規模ハウスを建設予定であった。しかし、協力企業の一社が撤退したため予算規模が縮小し、既存の公共施設である大槌町中央公民館内の部屋の内装改修して文化ハウスを設けることになった。平成24年度の研究では、まず「空間創出系研究」としてこの文化ハウスの計画検討を行い、次に「人間連携系研究」として被災地仮設住宅における住民調査研究を行い、さらに「資源共有系研究」として中心市街地の再開発検討研究を行った。 ・空間創出系研究:被災住民が集い学ぶための空間のあり方を検討し、文化ハウスの計画検討を行った。途中、一戸建て案から内装改修案への変化があったが、基本的な目的は変化せず、図書収蔵機能、教育学習機能、集会交流機能を導入した空間検討を進めた。計画案を具体的に表現するために模型や図面を作成した。 ・人間連携系研究:被災住民に対するヒアリング調査を行った。学生グループの参加を得て、大槌町和野地区の仮設住宅地で聞き取り形式の調査を行い、大槌に関する記憶、魅力、将来像、復興、生活について調査し、その結果を調査者間で共有して資料をまとめた。 ・資源共有系研究:被災地の都市的な空間資源の再構築を検討するために、学生たちとともに大槌町の中心市街地の再開発検討を行った。町方地区の現地調査をベースとして、空間資源の活用に関する複数の可能性を検討して復興案の作成を進めた。その結果に対して、町職員や建築家を含む講評者による評価検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究自体は全体の達成目標の中ではおおむね順調に進行している。ただし研究と並行して進めている大槌文化ハウスの設営プロジェクトの実現が寄付者の事情によって遅れているため、現地における空間・人間・資源系の調査研究を先行し、それを文化ハウスを拠点とする文化支援活動にいかす予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては、平成24年度に実施した空間創出系、人間連携系、資源共有系の研究を統合し、大槌文化ハウスにおける文化支援の諸活動として実践展開を行う。文化支援の活動は教育普及、集会交流、展示公開等の形式で現地で実施する。各系の研究は前年度の活動を継続しつつ、終盤に向けて活動の取りまとめと整理を行う。 ・人間連携系研究:人と人のつながりを再生する側面支援においては、連携の継続と拡張を目標とする。町内の仮設住宅地との連携をとりながら、大槌文化ハウスにおけるコミュニケーションを拡張する。東京大学教員をはじめとする外部の専門家等と被災住民の交流についても実践を試み、活動状況の記録と交流成果の検証を行う。 ・資源共有系研究: 住民や職員からの聴取や現地調査を通して蓄積された地域資源について取りまとめを行い、研究素材として蓄積し、一部は展示コンテンツとして公開することを検討する。蓄積されたメッセージを集約し、大槌の空間資源、自然資源、文化資源についての情報を整理する。 ・空間創出系研究:大槌文化ハウスの空間を活用し、仮設住宅地や既存の町施設では実施できなかった全町的なレベルでの文化支援の活動を企画運営し記録する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究と並行して進めている大槌文化ハウスの設営が遅れたため、当該年度においては一部の文化支援活動が行えなかった。次年度においては実施できなかった分を含めて集約的に研究を行う予定である。研究費は文化支援活動および研究活動に係る交通費・宿泊費等および教育普及活動における準備費・記録費・謝金等に充当される予定である。
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