研究課題/領域番号 |
24650595
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 文夫 東京大学, 総合研究博物館, 特任准教授 (20447353)
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キーワード | 文化支援 / 人間連携 / 空間創出 / 資源共有 / 博物館 / 被災地 |
研究概要 |
平成25年9月9日にオープンした岩手県大槌町の「大槌文化ハウス」を本研究の実践拠点として、被災地における文化支援の活動を実行し、町民の反応を通して成果を検証した。大槌文化ハウスは東京大学総合研究博物館(以下、総博)と民間企業の支援によって設営された文化施設であり、総博からの寄贈図書3500冊と学術標本4点が設置されている。総博が2006年から実践している「モバイルミュージアム」の事例として、総博本体の学術資源や人的資源を生かした文化支援を行っている。 平成25年度は「東大教室@大槌」という町民のための教育支援活動を企画し、総博の研究者によって年度内に合計10回のレクチャやワークショップを実施した。東大教室の内容は各担当者の研究テーマによるが、大槌や三陸など地域のトピックを含めるように心がけた。毎回十数名の町民が参加し、熱心に聴講し、活発な質疑や議論が行われた。終了後に大槌町が実施する受講者アンケートをもとに、東大教室についての評価・感想・意見を収集し分析した。 この教育支援活動によって次のような成果が得られた。人間連携に関わる成果として、町内各所から参加した受講者が新たなコミュニケーションをはかる契機になったこと。空間創造に関わる成果として、大槌町の将来像やまちづくりに関する多様な意見を交換し集約することができたこと。資源共有に関わる成果として、専門研究者の知見および住民自身の情報提供により地域の歴史文化や自然環境についての理解を深めることができたこと。受講者の多くから東大教室で学ぶことが楽しいという感想が寄せられ、知的活動を介した地域文化の興隆に多少なりとも貢献することができた。 博物館という多様な研究分野を擁する研究教育組織は、このような分野横断的な活動を通して、被災地の文化支援に幅広く寄与できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大槌文化ハウスのオープン後、連続して教育支援活動を実施し、その成果を検証することができてた。
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今後の研究の推進方策 |
大槌文化ハウスを拠点とする文化支援の活動を継続する。約1ヶ月半に1回(2講座)のペースで行われている東大教室@大槌を中核として、親子向けの体験イベントなどの新しい実行形式を導入して町民の参加意識を高める工夫をする。 人間連携に関わる教育支援系研究では、町民同士のコミュニケーションを高め、相互連携による自律的な復興活動へのサポートに結びつける。空間創造に関わる文化創出系研究では、町民による新しいまちづくりのイメージを具現化し、生活文化の空間的構築のサポートを行う。資源共有に関わる情報共有系研究では、地域の歴史文化や自然環境に関する情報を蓄積記録し、文化情報アーカイブの基礎的生成に協力する。 研究のまとめとしてこれまでの教育支援活動の内容を文書化し、その成果の検証と分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の実践拠点となる「大槌文化ハウス」の設営場所が、現地の事情により仮設住宅地内から中央公民館内に変更になったために、施設の完成が当初予定より1年3ヶ月遅い平成25年9月にずれ込んだ。その結果、大槌文化ハウスで実施する「東大教室@大槌」を中核とする教育支援系研究の開始が遅くなり、また、その後に予定していた教育コンテンツの情報共有系研究および町民と共同作業する文化創出系研究の実施も遅くなった。 延長に該当する研究計画部分を引き続き着実に実施する為に助成金を使用する。具体的には教育支援系研究における研究者および学生の出張旅費、情報共有系研究における教育コンテンツのテキスト化のための人件費、文化創出系研究における関連資料のデジタル化経費および復興協議用の模型制作費、その他、記録保存用の情報機器類の購入費などに充当する予定である。
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