東日本大震災の被災地における中長期的な地域再生のための「文化支援」の研究調査を行った。東京大学総合研究博物館は複数の民間企業の協力を得て、岩手県上閉伊郡大槌町に文化支援の拠点施設の整備を進めてきた。当初は平成24年春の完成が見込まれたが、場所変更や企業撤退などの諸事情から遅延が発生し、平成25年9月に大槌町中央公民館内に「大槌文化ハウス」として完成し一般公開された。平成24年度および25年度の研究では、まず「空間創出系研究」としてこの大槌文化ハウスの計画検討を行い、次に「人間連携系研究」として被災地仮設住宅における住民調査研究を行い、さらに「資源共有系研究」として中心市街地の再開発検討研究を行った。平成26年度においては、大槌文化ハウスの「東大教室@大槌」で継続的に実践した「空間の教室」のワークショップ活動をもとに、空間・人間・資源系の視点を連携して、以下のような文化再生の構想支援研究を行った。 ・空間創出系研究:大槌の復興再生のまちづくりための研究を行った。ワークショップの参加者に対するヒアリングを通して地域住民の問題意識を把握し、まちづくりのさまざまなアイディアを出し合い、それらを地図の上にプロットして「まちづくりアイディアかさねマップ」を作成した。 ・人間連携系研究:地域の人間社会の再生について複数の視点から研究を行った。「持続可能性」では人間社会の存続とための具体的な方策を、「環境共生」では自然環境と人間社会の共存のための方法を、「コミュニティ再生」では震災後に分断された人間関係の再構築のあり方を検討した。 ・資源共有系研究:大槌の自然資源と文化資源の再評価の研究を行った。イトヨや湧水などの希少な自然資源、町方遺跡や城址や郷土芸能などの文化資源を次世代に伝えていく必要性が確認された。これらの地域資源を保存継承しつつ、今後のまちづくりに積極的に活用する方法を検討した。
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