研究課題
国指定天然記念物である千屋断層,丹那断層,根尾谷断層,郷村断層,野島断層の5つの地震断層の保存・活用の現況を現地調査に基づき整理した。保存状況は野島断層と他の4つの地震断層で大きく異なり,良好な形状保存には地震断層の出現直後からの迅速な対応が必要である。一方で戦前の地震断層は屋外でも自然保存されている例が多く,都市開発の有無や地元の保存意識の重要さが認識された。活用に関しては地震断層を地元密着型,観光主体型,両者の中間型に類型化し,それぞれの現況と課題を整理した。地元密着型はジオパークでも活用されているが,ガイドが活躍できるだけの集客に欠ける点が課題である。逆に観光主体型は地元の教育利用が少なく,とくに若年層の地震断層への理解が薄いという問題があった。中間型(根尾谷断層)は両者の課題を有しているが,市町村合併の影響もあって対応が進んでいない。いずれの類型でも,文化財として扱われることに利点と障害があることと,防災教育や地学教育への活用を進めるためソフト事業の企画・実施ができる人材や組織が必要であることが明らかになった。一方,台湾の地震断層の保存・活用には,中国文化とは離れて,野島断層や根尾谷断層という日本の事例が参照されており,日本の経験が台湾で役立ったことが明確になった。日本の大都市に普通に見られる防災センターなどの教育拠点が稀な台湾では,防災・減災教育に果たす地震断層の意義は大きい。このため日本で地震断層がジオパークに組み込まれた事例を参考にし,921地震教育園区などを中心とした「台湾車龍埔断層ジオパーク」の設立を提言した。またその取り掛かりとして,921地震サイトマップの作成を試みた。断層ドミノなどを取り込んだ防災イベントを,地震断層の保存施設だけでなく公立図書館と協力して進めた。図書館との協働は,とくに地元での防災教育や地学教育の展開に有効である。
1999年台湾集集地震で生じた地震断層や被災建造物などの保存地をサイトマップにまとめ、地震防災と自然災害の地学的な理解をテーマとした「台湾車龍埔断層ジオパーク」推進の一助としています。
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活断層研究
巻: 42 ページ: 86-88
日本活断層学会2014年度秋季学術大会講演予稿集
巻: 6 ページ: 40-41
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