研究概要 |
真核細胞の核膜に存在する核膜孔複合体(NPC)は、30種類以上のNPCタンパク質で構成されており、核ー細胞質間のRNA、及びタンパク質の物質輸送を制御している。申請者らは、NPCタンパク質であるRae1、及びNup98が白血病発症に関与することを発見した。これまでにもいくつかのNPCタンパク質の異常が白血病患者で見つかっていたが、その理由は不明であった。一方、NPCタンパク質は重要な転写因子の輸送、及び、有糸分裂期での機能を持っているため、申請者はNPCタンパク質が白血病発症の際にエピジェネティックに寄与するのではないかと仮説をたてた。そこで、本研究ではNPCタンパク質ーヒストン修飾による発がんのエピジェネティックなメカニズムを解析することを目的とした。 当該年度はNPCタンパク質が有糸分裂期に中心体で発現し、中心体恒常性に関与していることを示した(Hashizume et.al., Cell Cycle, 2013)。また、NPCタンパク質RanBP2の発現低下が染色体のミスアライメントとmitotic catastropheを誘導することを明らかにした(Hashizume et.al., Cell Death Dis., 2013)。さらに、NPCタンパク質Rae1にも深く関与していることが知られる核分裂装置タンパク質NuMAが、p53による転写を制御していることを示した(Endo et.al., Cell Dath Dis., 2013)。当該年度は、Nup98/JARID1Aトランスジェニックマウスの樹立に成功し、現在引き続き白血病発症メカニズムの解析を行っている。
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