研究課題/領域番号 |
24650614
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉田 郁也 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90240275)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
平成24年度は、 MC12細胞で見られる非対称分裂とそれに続いて起きる再活性化現象に関して細胞遺伝学的検証をおこなった。再活性化に関わる前駆細胞の集団中への出現、非対称分裂、リプログラミング、不活性X染色体の再活性化という現象が互いにどのように関連し合うのか、そのメカニズムに関して以下の結果を得た: 1)6TG存在下でのFluctuation法(以下、MF法)による幹細胞様前駆細胞の出現様式の解析を行ったところ、MC12細胞集団中に6TG耐性の前駆細胞が確率的に出現することが明らかになった。 2) MC12細胞をBrdUラベルした後に、HAT選択後に出現してきた耐性コロニーを抗BrdU抗体で染色したところ、ほぼすべてのコロニーで、BrdUを取り込んだ細胞が確認された。この結果から前駆細胞は休眠細胞でないことが証明された。一方、6TG非選択下でのHAT耐性細胞の増殖測定や希釈実験などから 前駆細胞は培養条件に関わらず非対称分裂を繰りかえし前駆細胞自身とHAT耐性細胞を生み出していることが明らかになった。 3)非対称分裂や幹細胞増殖に関わることが既に知られている因子(Akt、Gpsm2、Pard6b、Tdgf1)に関してsiRNAを用いた発現抑制実験をおこなった。現在までにGpsm2の抑制によってHAT耐性細胞の出現数が減少する傾向が、またAkt1の抑制によって増加する傾向が観察されているが、今後、更なる解析が必要である。 4)MC12細胞集団レベルでは発現が認められないが、HAT耐性MC12細胞では発現が上昇する因子(多能性の維持やリプログラミングに関連する因子)をMC12細胞で強制発現したのちに前駆細胞の出現様式をMF法で計測したところ、前駆細胞の出現を著しく抑制する因子(1因子)と、促進する因子(3因子)を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に予定していた解析とその結果(参照のこと)は以下の通りである:(1)改変Fluctuation法などによる幹細胞様前駆細胞の出現頻度・様式の解析:完了。(2)前駆細胞が休眠細胞でないことの証明:BrdUラベル法で完了。この結果、当初、予定していたCM-H2DCFDA染色法は行わなかった。(3)非対称分裂や幹細胞増殖に関わることが知られている既知因子に関するsiRNAを用いた発現抑制実験:解析進行中。一定の傾向を示す因子は見られたが、更なる解析が必要。siRNAによる抑制効率を上昇させるなどの方法的改善も必要。前駆細胞の出現頻度については、siRNA法では解析出来なかったため(5)に示した新たな解析を行った。(4)腫瘍細胞表面局在マーカーCripto-1による前駆細胞の単離実験:未解析。(5)多能性維持・リプログラミング関連因子の強制発現による前駆細胞の出現頻度の変化:(3)の代替として新たに行った。現在、関連4因子を解析中。
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今後の研究の推進方策 |
前項、【現在までの達成度】で述べた(3)非対称分裂や幹細胞増殖に関わる因子に関するsiRNAを用いた発現抑制実験については実験手法の改善を行いながら解析を続ける。また新たに開始した(5)多能性維持・リプログラミング関連因子の強制発現による前駆細胞現頻度の変化については、非常に興味深い結果が得られつつあるので更に解析を展開していきたい。 おおむね順調に解析が進んでいるため、上記以外は交付申請書に記載した25年度の実験計画によって研究を推進する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(B-A)10,675円は、25年度の物品費(消耗品費・一般試薬類)に組み込んで使用する。
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