研究課題/領域番号 |
24650618
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 雅英 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40183446)
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研究分担者 |
加藤 琢哉 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00551970)
村雲 芳樹 北里大学, 医学部, 教授 (40324438)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | HDAC1 / RET finger protein / TRIM27 / 卵巣がん / 抗がん剤耐性 |
研究概要 |
HDAC1結合タンパクであるRET finger protein (RFP; TRIM27とも呼ばれる)の卵巣がんの抗がん剤耐性における役割を解析した。免疫染色法にて92例の卵巣がんにおけるRFPの発現を調べたところ62%で陽性を示し、RFP陽性例では有意差はないものの(P=0.1266), RFP陰性例に比較し5年生存率が悪い傾向が見られた。2種類のヒト卵巣がん培養細胞(SKOV3, Hey)を用いて検討した結果、RFPの発現をsiRNAを用いてノックダウンすると、carboplatinおよびpaclitaxelによるアポトーシスの誘導が有意に増加し、抗がん剤の効果が増強することが判明した。一方、RFPのノックダウンのみでは卵巣がん細胞株の細胞増殖能に変化は見られなかった。 次にSKOV3細胞にRFPのshort hairpin RNAを発現させ、RFPの発現をノックダウンした細胞株を樹立した。コントロールとshRNAを発現させたSKOV3細胞(500万個)を6週令の雌のヌードマウスの皮下に移植し、腫瘍が一定の大きさ(50立方mm)に達した後、PBSあるいはcarboplatinを腹腔内に1日おきに4回投与し、4グループ間での腫瘍増殖を比較した。RFPの発現をノックダウンしたSKOV3細胞を移植したマウスにcarboplatinを投与した群において、腫瘍増殖が著しく抑制された。この結果はがん細胞においてRFPの発現をノックダウンすることにより、抗がん剤に対する感受性が高まることを示し、新たな治療法の開発につながると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進行卵巣がんの治療は抗がん剤治療が主流であり、抗がん剤耐性機序を解明することにより新たな治療法の開発につながる。本プロジェクトにおいて、卵巣がんにおけるRFPの発現頻度は高く、その発現が抗がん剤耐性を関連していることを明らかにできた。特にin vivoで卵巣がんでのRFPの発現を低下させると、抗がん剤に対する感受性が著しく増強できることが明らかになり、RFPのノックダウンは有望ながん治療の補助療法になることが示された。以上の結果より、本プロジェクトとおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさまざまな臓器に由来する腫瘍を用いて、RFPの発現と抗がん剤耐性との関連性を明らかにしていく予定である。またin vivoにおいてRFPを効率的にノックダウンする方法を確立し、実際にがん治療の応用できるかどうかについてさらに検討を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は研究費はすべて物品費として使用する。細胞培養に必要な培養器具、牛血清、遺伝子ノックダウンのためsiRNA、腫瘍移植実験のためのヌードマウスの購入費用、ウェスタンブロットやPCR用の生化学試薬などに使用する。
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