研究課題
これまでの解析から、腸管上皮細胞に特異的に発現するホメオボックス転写因子CDX2が大腸腫瘍形成の発生初期段階を抑制することが明らかになった。一方で、そのファミリー因子であるCDX1の大腸腫瘍形成における役割については分かっておらず、本申請課題ではCDX1の大腸癌腫瘍形成における役割について解析を行う。これまでの解析から、CDX1を抑制するとマウスの腸腫瘍が悪性化して腸癌が発生することと、CDX1の発現がヒト大腸癌組織で低下していることが分かった。そこで、CDX1の発現低下による大腸癌悪性化の機序を解析することにより、大腸腫瘍の悪性化(癌化)の機序の解明を目指して研究を進めている。平成24年度は、CDX1により制御される遺伝子の解析を行った。この目的のために、Tet-inducibleにCDX1の発現を誘導できる細胞において、CDX1の発現誘導後、12時間と24時間において、遺伝子発現の変動をcDNAマイクロアレイ法により解析し、次のことが分かった。1) CDX1の発現の誘導により、癌幹細胞に特徴的に発現している多くの遺伝子群の発現が低下すること。2) CDX1の発現の誘導により、癌幹細胞の維持に重要な役割を担っている細胞内情報伝達経路が抑制されていること。3) ヒト大腸癌のゲノムワイドの解析から、大腸癌の抑制因子の可能性が示唆されている複数の遺伝子の発現がCDX1の発現の誘導により変化していること。本年度の解析結果から、CDX1は、大腸癌細胞の幹細胞の性質を制御するとともに、大腸癌幹細胞の維持に重要となる細胞内情報伝達経路を制御していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
CDX1が制御していると思われる細胞内機能が同定できたため。
平成24年度の解析より示唆された機能の解析を行う。1) CDX1により大腸癌幹細胞を制御されていることを検証する。2) CDX1により制御されていると思われる細胞内情報伝達経路の制御機序の解析をすすめる。同時に、これらの機能を介して、CDX1が大腸癌の悪性化を抑制する機序を解明する。
H24年度に予定していた実験が予定していた行程よりも短縮して進められたため、試薬、消耗品の使用量が少なくなり、研究費に残額が生じた。また、H24年度に得られた研究結果より、次に細胞内シグナル伝達経路の解析を行うために発光測定装置の購入を行う予定にしている。H25年度研究費と合わせて発光測定装置を購入する予定である。
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Scientific Report
巻: 642 ページ: -
10.1038/srep00642