• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

ATMの新規ゲノム安定性維持機構:染色体非ストレス時における細胞周期因子の制御

研究課題

研究課題/領域番号 24650622
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関九州大学

研究代表者

藤田 雅俊  九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (30270713)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードATM / Cdt1 / 細胞周期 / クロマチン
研究概要

ATMキナーゼは、主にDNA二重鎖切断で活性化し機能する。しかしその活性化制御機構はまだ不明な点が多い。我々は、ATMが染色体非ストレス時のS期において、複製開始制御因子Cdt1の分解を制御しているという興味深い知見を得た。この新たなATMシグナル経路の解明が、本研究の目的である。
① ATMによるCdt1分解制御にはキナーゼ活性が必要であった。また、NBS1の抑制もCdt1分解に影響を与えたので、MRN複合体もこの制御に必要であろう。Aktの抑制、あるいはSkp2の抑制はATM抑制と同じくCdt1分解を抑制した。よって、この新たなATM機能は、少なくとも部分的にはATM-Akt-Skp2経路を介していると考えられる。実際に、ATM抑制細胞においてAkt抑制やSkp2抑制を行っても、Cdt1の更なる安定化は認められず、このことが支持された。しかしながら、ATMがどのようにAkt-Skp2経路に影響を与えているのかは、未だ不明である。
② 人工的染色体構造改変によるATM活性化系の構築に向けて、以下の研究を行った。多コピーLacO配列を安定保持するヒトHT1080 細胞を樹立した。また、LacI融合Cdt1、SNF2H、CDC6等の発現ベクターを構築し発現を確認した。さらに、LacOへの集積も確認しつつある。また、LacI融合蛋白質の集積により、多コピーLacO配列のクロマチン構造が変化した場合、その同定を行う必要がある。例えば、FAIRE法(formaldehyde-assisted isolation of regulatory elements)でヌクレオソームフリーのクロマチンDNAを単離しその量を定量する方法などが考えられる。このためには、LacO繰り返し配列を定量的に同定できる方法が必要である。そこで、リアルタイムPCRを用い、感度良く定量できる方法を確立した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

概ね順調に進んでいると考えている。ATMが染色体非ストレス時のS期において複製開始制御因子Cdt1の分解抑制を制御するという新たな機能を持つこと、そしてこの制御は少なくとも部分的にはATM-Akt-Skp2経路を介していると考えられることについては、すでに論文を投稿中である。しかし、ATM-Akt-Skp2経路だけではすべての現象を説明できず、他の重要な経路も存在していると考えられる。恐らく、複数の経路がredundantに関与していると考えている。
②の人工的染色体構造改変によるATM活性化系の構築に関しても、概ね順調に進んでいると考えるが、多コピーLacO配列を安定保持するヒトHT1080 細胞の樹立にはやや困難を伴った。恐らく、繰り返し配列である多コピーLacO配列が不安定であるためであろうと考えている。現在、樹立できた細胞を用いて解析を進める一方で、多コピーLacO配列を安定保持する他の細胞株(HeLa、293Tやラット細胞株等)の樹立に向けても準備を進めている。

今後の研究の推進方策

上述したように、ATMが染色体非ストレス時のS期において複製開始制御因子Cdt1の分解抑制を制御するという新たな機能を持つこと、そしてこの制御は少なくとも部分的にはATM-Akt-Skp2経路を介していると考えられることについては、すでに論文を投稿中である。従って、論文の受理に向けて必要な追加実験を行うことが、今後の主眼となる。他の重要なATM-Cdt1経路の解明については、そのredundancyから解析は難しいかもしれないと考えている。
②の人工的染色体構造改変によるATM活性化系の構築に関しては、多コピーLacO配列を安定保持するヒトHT1080 細胞の樹立ができ、またLacI融合Cdt1、SNF2H、CDC6等の発現ベクターも準備できたので、今後はこれらを導入しその効果を検討していきた。すなわち、(1)LacI-Cdt1のLacO部位への集積により、SNF2Hも集積させるのか、(2)その結果、ATMの活性化(ATMのリン酸化やATM基質のリン酸化を免疫染色で検討)が起きるのか、また(3) LacI-Cdt1により同部位のクロマチン構造は影響を受けるのか(FAIRE-qPCRやヒストンChIP-qPCRで検討)を調べたい。同様に、LacI-SNF2Hの影響や、LacI-CDC6のATR集積/活性化への影響を調べたい。

次年度の研究費の使用計画

上述したように、多コピーLacO配列を安定保持するヒトHT1080 細胞の樹立にやや手間取った。そのため、LacI融合蛋白質の効果を観るために必要な種々の抗体の作成や購入が今年度にずれ込んだ。よって今年度の研究費と併せて、上述の今後の研究に向けて適切に執行して行きたい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)

  • [雑誌論文] The E1 protein of human papillomavirus type 16 is dispensable for maintenance replication of the viral genome.2012

    • 著者名/発表者名
      Egawa N., et al.
    • 雑誌名

      J. Virol.

      巻: 86 ページ: 3276-3281

    • DOI

      10.1128/JVI.06450-11

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Heterocomplex formation by Arp4 and β-actin is involved in the integrity of the Brg1 chromatin remodeling complex.2012

    • 著者名/発表者名
      Nishimoto N., et al.
    • 雑誌名

      J. Cell Sci.

      巻: 125 ページ: 3870-3882

    • DOI

      10.1242/jcs.104349

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A critical role of MYC for transformation of human cells by HPV16 E6E7 and oncogenic HRAS.2012

    • 著者名/発表者名
      Narisawa-Saito M., et al.
    • 雑誌名

      Carcinogenesis

      巻: 33 ページ: 910-917

    • DOI

      10.1093/carcin/bgs104

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi