研究概要 |
以前に当研究室では、増殖におけるサイトカイン要求性が異なるマスト細胞株を複数種類樹立した。それらのマスト細胞株の中に、1. 増殖に重要な役割を果たすc-Kitチロシンキナーゼの恒常的活性化変異を持ち、自律増殖および腫瘍原性を有する細胞 (RCCM細胞), 2. 野生型c-Kitを発現し、増殖にサイトカインを必要とする細胞 (R細胞)を見出した。 平成25年度は、マスト細胞の腫瘍化メカニズムの解明を目的とし、それら細胞間でどのような因子の発現の違いがあるのかをマイクロアレイを用いて解析した。その結果、R細胞と比較し、RCCM細胞で有意に発現亢進するサイクリン, 転写因子を複数見出した。発現亢進を示したサイクリン分子種は、正常細胞に比べ、腫瘍で特に発現が高い報告が蓄積されており、RCCM細胞の自律増殖性に必須の役割を果たすと予想した。興味深いことに、RCCM細胞のサイクリンをshRNAでノックダウンしたところ、自律増殖性の顕著な抑制が認められた。一方、このサイクリンのノックダウンは、R細胞の増殖には影響を与えなかった。すなわち、我々は、マスト細胞の腫瘍の自律増殖に特異的なメカニズムを見出したと考えられる。 今後、マイクロアレイ解析で得られた他の因子のマスト細胞の腫瘍化における役割を調べるとともに、それらとc-Kitの恒常的活性化との関係を明らかにしていきたい。
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