研究課題/領域番号 |
24650625
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
原 英二 公益財団法人がん研究会, がん研究所がん生物部, 部長 (80263268)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞老化 / アポトーシス / 国際情報交換 / 発癌 |
研究概要 |
細胞老化を起こした老化細胞がアポトーシス抵抗性を示す分子メカニズムの解明とその阻害方法の開発を目指して研究を行ない、以下の研究成果を得た。 (1) 公的または商業的細胞バンクから多種類のヒトの正常細胞株(皮膚繊維芽細胞、胎児肺由来繊維芽細胞、網膜上皮細胞、表皮角化細胞、肝星細胞など)を入手し、それらの細胞に継代培養の繰り返し、DNAダメージ誘発剤、活性化型Rasの発現など、発癌の危険性があるストレス(発癌ストレス)を与えて細胞老化を誘導した場合に共通して発現レベルが変化する遺伝子群をDNAマイクロアレイを用いた解析により探索した。その結果、細胞周期制御因子、DNA修復酵素、細胞骨格構成因子、炎症性サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、細胞外マトリックス分解酵素などすでに細胞老化との関連が知られていた遺伝子以外にアポトーシスの制御に係る可能性がある遺伝子群を複数同定した。 (2)培養細胞で得られた上記遺伝子群の発現変化が生体内でも本当に起こっているかどうかについて検討するために、発光シグナルを利用して細胞老化マーカーであるp16遺伝子やp21遺伝子の発現をリアルタイムにインビボイメージングできるマウスを用いて解析を試みた。その結果、加齢やDNAダメージ誘発剤の投与、活性化型Rasの発現等、細胞老化の誘導が予想される処置のみならず、肥満などのストレスを与えた場合においても、培養条件下で認められた細胞老化関連遺伝子の発現変化が確認された。更に興味深いことに、そのうちの一部の遺伝子の発現変化については、肥満に伴う肝癌との関連が指摘されている、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の患者から摘出した肝星細胞においても確認された。これらの結果は培養細胞を用いて得られた細胞老化に伴うアポトーシス関連遺伝子の発現変化の少なくとも一部は生体内でも起こりうる現象であることを強く示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標としていた様々な老化細胞で共通して発現レベルが変化する遺伝子群の同定に成功した。また、それら遺伝子群のうち少なくとも幾つかは実験動物(マウス)やヒトの臨床サンプルを用いた解析によって、生体内で起こる細胞老化の場合にも発現レベルが変化することが確認された。このため、当初の計画通り研究が進行していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 老化細胞を除去するための分子標的の同定 H24年度の研究で絞り込んだ遺伝子群の発現パターンを基にイン・シリコでパスウェイ解析を行い、アポトーシス抵抗性に関与する可能性がある遺伝子の絞り込みを行う。更に、それら遺伝子をRNA干渉法 (RNAi)によるノックダウン、もしくは過剰発現することで老化細胞がアポトーシスを起こしやすくなるかどうか調べ、老化細胞のアポトーシス抵抗性を規定する分子基盤を明らかにすると同時に老化細胞を除去するための分子標的の絞り込みを試みる。 (2) 老化細胞を除去する薬剤の探索 上記 (1) の解析で絞り込んだ分子標的に対する阻害剤を共同研究として利用可能な化合物ライブラリー又は公的な化合物ライブラリーを用いてスクリーニングを試みる。また、もしもこの方法がうまくいかない場合に備えて、効率よくノックダウン出来るsiRNAオリゴの合成も行い、動物実験でその効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) 物品費(生化学・分子細胞生物学研究用試薬代(80万円)、培養容器等プラスチック器具類代(20万円)、実験動物購入・維持費(20万円))として総額120万円を使用予定。 (2) 旅費に10万円を使用予定。 (3) その他(論文掲載料(30万円)、物品輸送費(10万円))として40万円を使用予定である。
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