研究課題
細胞老化を起こした細胞(老化細胞)がアポトーシス抵抗性を示す分子メカニズムの解明とその阻害方法の開発を目指した研究を行い、以下の研究結果を得た。(1)前年度までに単離した老化細胞において発現レベルが上昇し、ノックダウンすることで老化細胞にアポトーシスを誘導できる遺伝子について更に詳細な解析を行った結果、これらの遺伝子をノックダウンすると正常細胞もアポトーシスを起こしやすくなるため、創薬の分子標的には適さないことが分かった。(2)線維芽細胞を用いて活性化型Rasにより細胞老化を誘導させる前後でアポトーシス誘導能に大きな変化が見られる低分子化合物を化合物ライブラリーを用いてスクリーニングした。その結果、ある特定のヒストン修飾に関わる酵素に対する阻害剤がヒットした。更にスクリーニングを続けた結果、同じ酵素に対する別の阻害剤がヒットしたため、これら阻害剤の共通の標的分子を(ヒストン修飾酵素)を活性化型Rasにより細胞老化を誘導した線維芽細胞においてノックダウンしたところ、効率よくアポトーシスを誘導できることが確認された。また、活性化型Ras以外にも放射線、DNA損傷性薬剤、または分裂寿命により細胞老化を誘導した場合にも同様の結果が得られた。更に線維芽細胞以外にも網膜色素上皮細胞においても同様の結果が得られたため、このヒストン修飾酵素が細胞老化に共通してアポトーシス抵抗性を示す原因分子の一つと考えられた(3)上記ヒストン修飾酵素を阻害することで発現レベルが変化する遺伝子群をRNAシークエンス法により同定することに成功した。今後、これらの遺伝子産物を標的とすることでより特異性が高いアポトーシス誘導法の開発に繋がる可能性が期待される。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 10件)
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