研究課題/領域番号 |
24650626
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
冨田 章弘 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター ゲノム研究部, 部長 (40251483)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | UPR / 小胞体ストレス / がん / PERK / グルコース飢餓 / 低酸素 |
研究概要 |
UPR(unfolded protein response)は、がん細胞が特殊な腫瘍内環境に適応し、生存増殖するのに重要な役割を果たしている。本研究では、UPR制御において中心的役割を果たすPERKや、我々の見出してきたTBL2といったPERKシグナル伝達経路の制御分子に焦点を当て、これらの機能阻害を通じ、PERKシグナル伝達経路の腫瘍内環境適応における役割を明らかにする。また、PERKやTBL2の機能阻害を誘導した際に、合成致死を引き起こす因子・阻害剤の探索を行う。当該年度は、PERKシグナル伝達経路の腫瘍内環境における役割解析を中心に、以下の具体的研究を行った。PERKならびにTBL2について、レンチウィルスベクターshRNAを、ヒト腎がん786-O細胞、ヒト乳がんMCF7、ヒト大腸がんHT-29細胞、ヒトすい臓がんPANC-1細胞、ヒト胎児腎293細胞へ感染することによって、ノックダウンがん細胞株を樹立した。イムノブロットによるノックダウンの確認後、単層培養での細胞増殖試験を行ったところ、今回樹立した細胞では、ノックダウンの影響がほとんどないことが明らかになった。興味深いことに、786-O細胞を用いた解析では、ノックダウンにより、低グルコース・低酸素といった強いストレス条件下での細胞生存率が低下することが分かった。次に、786-O細胞を用い、親株ならびに樹立したPERKならびにTBL2のノックダウン細胞株をヌードマウスに移植し、ゼノグラフト形成について検討したところ、今回の予備的検討では、造腫瘍性に有意な違いは認められなかった。さらに、形成させたゼノグラフトを採取し、採取したゼノグラフトよりRNAを抽出し、マイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、UPR制御において中心的役割を果たすPERKや、我々の見出してきたTBL2といったPERKシグナル伝達経路の制御分子に焦点を当て、これらの機能阻害を通じ、PERKシグナル伝達経路の腫瘍内環境適応における役割を明らかにすることを第一の目的としている。当該年度では、複数のがん細胞株において、安定ノックダウン細胞の樹立に成功し、研究を進めるためのツールが整い、順調に滑り出すことができたものと考えている。次年度以降も、引き続き、樹立したPERKやTBL2のノックダウン細胞株を用い、時間の要するゼノグラフトにおける性状解析を続行する必要があるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は3年間の計画で第1年次終了時点であり、研究はおおむね順調に進み、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題はないものと考えている。第2年次においては、樹立したPERKやTBL2のノックダウン細胞株について、培養系において、スフェア培養やストレス感受性に対する基本性状を明らかにする実験を継続するとともに、ヌードマウスに移植し、形成させたゼノグラフトの性状解析を鋭意進める予定である。また、当初の予定通り、樹立した細胞を用いるなどにより、PERKシグナル伝達経路の機能阻害条件下で、合成致死作用を有する因子の探索研究に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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