研究課題/領域番号 |
24650628
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清野 研一郎 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (20312845)
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研究分担者 |
和田 はるか 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 講師 (70392181)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | がん幹細胞 |
研究概要 |
近年、細胞の分化状態の可塑性について新たな知見が集積している。その最たるものはiPS細胞に代表されるリプログラミングであり、理論的には細胞を様々な分化状態へ変化させることが可能になることも予想される。がん細胞についても同様であり、近年、自己複製能を持ち多分化能を有するがん幹細胞の存在が提唱されている。また、がんの新しい治療法を考えた場合、このがん幹細胞を標的にすることは非常に高い効果が期待される。そのひとつの方策として、がん幹細胞を得意的に認識しこれを攻撃するような新しい免疫細胞療法の可能性を探ることを考えた。先ず、がん細胞のなかでも幹細胞マーカーと言われる分子や形質を示す画分を抽出し、これを直接抗原提示細胞(樹状細胞)に変化させることを考えた。幹細胞マーカーとしてはCD133やSPを用い、それらを抽出した。そしてCEBPaやPu.1と言った転写因子を細胞に導入することで抗原提示細胞様に変化するかどうか検討した。しかし、細胞の分化転換は予想以上に困難であり、遺伝子導入の効率の改善法などについて検討した。陽性コントロールと考えられるB細胞にこれらの遺伝子を導入したが、報告例ほどの変化は認められなかった。同時期に、我々はマウスグリオーマ細胞を数種類入手した。これらのうち2つの細胞株は同じ細胞から分化したものであるが、一方は少ない数でも腫瘍を形成するというがん幹細胞の性質を持つものであった。それらの遺伝子発現を検討すると、免疫系に関する分子発現が大いに異なることを発見した。それらは、ある種の幹細胞関連転写因子の遺伝子導入により減弱したり増強することが判明した。今後はこれらの細胞を用い、がん幹細胞性を規定する遺伝子と免疫系分子の発現の相関について検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していた細胞を用いた実験では遺伝子導入と形質転換が予想に反しうまく行かなかった。しかし、がん幹細胞、幹細胞関連遺伝子、免疫抑制分子を繋ぐと思われる興味深い細胞を見出した。当初の計画通りではないが、がん幹細胞と免疫を繋ぐ研究として再スタートを切ったと考えており、やや遅れているという評価だ。
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今後の研究の推進方策 |
新たに見出した、がん幹細胞を免疫系観点から規定する可能性のある細胞の解析を進め、がん幹細胞が生体内でどのように免疫系に認識されどのように攻撃されるのか検討を進める。がん幹細胞が免疫系を抑制し、そのために少数の細胞でも生着するという機構が発見されれば、その抑制分子を阻害するという治療戦略も考えられ、その分子メカニズムの解明を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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