研究課題
癌は日本における死亡原因でもっとも多い病気であり、特に現行の治療法に対して抵抗性を示す難治性進行癌に対する新規治療法の確立が望まれている。これまでの研究により、麻疹ウイルスのエンベロープであるH/F蛋白による膜融合能を、H蛋白の元来の細胞レセプターへの吸着能を排除する変異(Haals)を加え、かつ一本鎖抗体(scFv)によって制御することに世界で初めて成功した。さらに、レンチウイルスのエンベロープをこのHaals-scFv/F蛋白で置換することにより、scFvを介して特定の標的細胞にのみ感染するシュードタイプレンチウイルスベクターの作出にも成功した。そこで本研究では、この技術を応用しレンチウイルスにscFvを提示させた革新的ライブラリーを確立し、このライブラリーより網羅的に悪性腫瘍特異的抗体を同定することによって新しい癌標的治療法の開発を目指している。本年度は、多様性の異なる3種類のscFv(①複数ドナーのリンパ球より、mRNAを単離しRT-PCR反応によりcDNAを合成後、そのcDNAよりVH(重鎖の可変領域)遺伝子とVL(軽鎖の可変領域)遺伝子をPCR反応で増幅し、リンカーペプチドで結合したscFv遺伝子ライブラリー、②あらかじめファージ抗体ディスプレイライブラリーのヒト肺癌、又は膵臓癌細胞に対する2~3回のバイオパニングによって濃縮されたscFvライブラリー、③CD9、CD20、CD38、CEA、EGFR、EGFRvIII、HER2、TfRなど同定済みの腫瘍特異的scFvからなるミニscFvライブラリー)をHaalsの細胞外C末端に連結させ、そのHaa-scFvをレンチウイルスベクターに挿入したプラスミドライブラリーを構築した。
3: やや遅れている
本年度は、標的化Haa-scFvシュードタイプレンチウイルス抗体ディスプレイライブラリーを構築する計画であったが、そのレンチウイルスを産生するためのプラスミドライブラリーの作製に予想以上の時間を要した。
本年度で構築したプラスミドライブラリーを用いて、レンチウイルス抗体ディスプレイライブラリーを構築し、ヒト肺癌、又は膵臓癌細胞への感染による腫瘍特異的scFvのスクリーニングと、同定したscFvのマウスモデルにおける腫瘍特異性の検討と単クローン抗体療法の検討を実施する。
該当なし
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Cancer Res
巻: 15 ページ: 2609-2621
10.1158/0008-5472.CAN-11-3185
http://ganshien.umin.jp/public/research/main/nakamura/