研究課題
癌は日本における死亡原因でもっとも多い病気であり、特に現行の治療法に対して抵抗性を示す難治性進行癌に対する新規治療法の確立が望まれている。これまでの研究により、麻疹ウイルスのエンベロープであるH/F蛋白による膜融合能を、H蛋白の元来の細胞レセプターへの吸着能を排除する変異(Haals)を加え、かつ一本鎖抗体(scFv)によって制御することに世界で初めて成功した。さらに、レンチウイルスのエンベロープをこのHaals-scFv/F蛋白で置換することにより、scFvを介して特定の標的細胞にのみ感染するシュードタイプレンチウイルスベクターの作出にも成功した。そこで本研究では、この技術を応用しレンチウイルスにscFvを提示させた革新的ライブラリーを確立し、このライブラリーより網羅的に悪性腫瘍特異的抗体を同定することによって新しい癌標的治療法の開発を目指している。本年度は、同定済みの腫瘍特異的scFv(CD9、CD20、CD38、CEA、EGFR、EGFRvIII、HER2、TfRなど)からなるミニライブラリーをHaalsの細胞外C末端に連結させ、そのHaals-scFvsをレンチウイルスベクターに挿入したプラスミドライブラリーを構築した。それを用いて、レンチウイルス抗体ディスプレイライブラリーを作製し、ヒト肺癌、又は膵臓癌細胞への感染によるscFvのスクリーニングを試み、各癌細胞で発現している標的分子に対する腫瘍特異的scFvが同定できるかどうかを検討した。その結果、Haals-scFv/F発現プラスミドを使ったュードタイプレンチウイルスの作出に比べて、Haals-scFvs発現ユニットをウイルスに挿入した抗体ライブラリーの作出では、ウイルスの産出量が激減し、十分なライブラリーサイズに達していないことが判明した。現在、ウイルス産出量を向上させるための改良に取り組んでいる。
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Virology
巻: 454-455 ページ: 237-246
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BioMed Research International
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