研究概要 |
この研究は、変異p53特異的に細胞死を引き起こす標的分子を発見することが目的である。想定される新規標的分子は、特定変異p53を発現するがん細胞特異的(正常細胞に発現なし)であると同時に、同じ特定変異p53を発現する他臓器のがんにも有効で(臓器横断的で、全癌の約5%が対象)、成功すれば新規の創薬シーズに繋がり、新しいがん薬物療法開拓に貢献できる。平成25年度は、平成24年度に実施した以下の研究(1)および(2)を再検証した。すなわち、(1)変異p53(ヒト悪性腫瘍で高頻度変異であるR175H, R248W, R273H)を誘導発現するSF126細胞(ヒト神経膠芽腫由来でp53欠失)・変異p53発現誘導株(テトラサイクリンONで発現誘導できる)に対してレンチウイルスshRNAライブラリーにより網羅的に遺伝子発現をノックダウンし、バーコードマイクロアレイでのスクリーニングを行い、R175H変異p53特異的細胞死遺伝子としての候補遺伝子を複数発見し、(2)さらに個々の候補遺伝子に対応するsiRNAを導入し、真に変異p53特異的に細胞死を引き起こす遺伝子を選択後、得られた変異p53特異的細胞死遺伝子うち、ID1遺伝子は変異p53を自然に発現する他の培養細胞でも細胞死を変異p53(R175H, R248W, R273H)特異的に引き起こすこと、を再検証した。R175H変異p53特異的な細胞死遺伝子のノックダウンがタンパク質発現抑制によって生じ、変異p53非発現時には起きないことを検証(proof of concept)した。再現性が得られたため、結果を英文論文として発表した。
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