研究課題/領域番号 |
24650643
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
堀 勝義 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (00143032)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 癌 / DDS / コンブレタスタチン |
研究概要 |
径3 mm以下の微小腫瘍では、ナノ粒子は血管から漏れにくく、腫瘍に蓄積しない(EPR効果が起きにくい)。しかし、コンブレタスタチンで腫瘍血流を遮断した後、循環が回復した腫瘍血管は、EPR効果を示すようになる。我々のこの実験所見を基に、本研究では、EPR効果の病態生理学的機序の解明と、ナノ粒子化医薬の微小転移巣に向けた治療戦略の開発を目指している。平成24年度は、①コンブレタスタチンを投与した時の微小腫瘍の循環機能変化と腫瘍再発との関係の解析、②コンブレタスタチン処置後の微小血管の構造変化の観察、③freeのdoxorubicin、およびdoxorubicin封入ミセルで処置した時の、微小腫瘍の治療効果の比較、を研究目標とした。①の研究で、コンブレタスタチンは微小腫瘍の血流を遮断し、全領域で腫瘍を変性させたが、腫瘍-宿主インターフェイスの血管では血流遮断は起きなかった。腫瘍辺縁部の癌細胞はこの血管から血液供給を受け、再増殖を開始することを示した。②の研究で、インターフェイスにある血管の内皮細胞の細胞質には、腫瘍血管と比べて、vesiculo-vacuolar organelle(高分子の血管外移行に関係する細胞内小器官)が豊富に存在すること、そして、この血管は、コンブレタスタチン処置後も高い血管透過能を維持することを示した。③の研究は、現在、doxorubicin封入ミセルとfreeのdoxorubicinの佐藤肺癌細胞に対するin vivoでの力価を比較しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究で、①宿主-腫瘍インターフェイスの血管は、微小増殖巣内部の腫瘍血管よりも、血管透過性が大きく亢進していること、②インターフェイスの血管には、透過性亢進に密接に関係した大きなサイズのvesiculo-vacuolar organelleが豊富に存在すること、③インターフェイスの血管は、腫瘍血管破断剤のコンブレタスタチンによっても血流が遮断されず、腫瘍血管破断後も高い透過性が維持されること、④腫瘍辺縁部の癌組織は腫瘍血管が破壊されても、インターフェイスの血管から血液供給を受け、その物質交換は、正常組織の物質交換とほぼ等しく、その栄養供給により癌が再発すること、⑤インターフェイスの血管の高い透過性により、宿主-腫瘍間に顕著な浮腫が生じること、を明らかにした。そして、この浮腫が高分子物質の腫瘍内停留と蓄積に密接に関係することが示唆された。これらの新しい所見を得たことにより、「コンブレタスタチンによる微小転移巣へのEPR効果導入と機序の解析」という研究目標は、達成に近づきつつある。
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今後の研究の推進方策 |
宿主-腫瘍インターフェイスの血管機能が、コンブレタスタチンによる微小増殖巣へのEPR効果導入に重要であることは、研究開始の段階ではわかっていなかった。しかし、昨年度の様々な実験を通して、インターフェイスの微小環境の変化(特に顕著な浮腫の誘導)の重要性が明らかになってきた。そこで、今後はインターフェイスを含めたより広い領域で、コンブレタスタチンによる腫瘍微小環境の変化を解析し、EPR効果の機序を明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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