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2013 年度 実施状況報告書

コンブレタスタチンによる微小転移巣へのEPR効果導入と機序の解析

研究課題

研究課題/領域番号 24650643
研究機関東北大学

研究代表者

堀 勝義  東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (00143032)

キーワード癌 / DDS / コンブレタスタチン
研究概要

径3 mm以下の微小腫瘍、また大きな腫瘍でも増殖が活発な領域では、ナノ粒子は血管から漏れにくく、腫瘍に蓄積しない(EPR効果が起きにくい)。しかし、コンブレタスタチン(African bush willowから単離された腫瘍血管破断剤)で腫瘍血流を遮断した後、循環が回復した腫瘍血管は、EPR効果を示すようになることを報告してきた。この実験所見を基に、本研究では、EPR効果の病態生理学的機序の解明と、ナノ粒子化医薬の微小転移巣に向けた治療戦略を開発することを目指して、以下の実験を行った。①コンブレタスタチン投与後の微小腫瘍の循環機能変化と腫瘍再発との関係の解析、②コンブレタスタチン処置後に起こる正常血管と腫瘍血管の微細構造の変化、③ドキソルビシン封入ミセルを単独投与した場合と、コンブレタスタチン処置後にドキソルビシン封入ミセルを投与した場合との治療効果の比較。
①の研究で、コンブレタスタチンは腫瘍内の全ての血管の血流を遮断し、全領域で腫瘍を変性させた。しかし、腫瘍-宿主インターフェイス(T-HI)の血管の血流は遮断されず、腫瘍辺縁部の癌細胞はこの血管から栄養を供給され、再増殖することを示した。②の研究で、T-HI血管の内皮には、腫瘍血管と比べて、vesiculo-vacuolar organelle(高分子血管外移行に関係する細胞内小器官)が豊富に存在すること、そして、この血管は、コンブレタスタチン処置後も循環機能を保持し、高い血管透過能を維持することを示した。③の研究で、コンブレタスタチン処置後にドキソルビシン封入ミセルを投与すると、ドキソルビシン封入ミセル単独よりも、LY80腫瘍の増殖が顕著に抑制されることを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究で、①T-HI血管は、微小増殖巣の血管および活発な増殖をしている腫瘍内部の腫瘍血管よりも、血管透過性が大きく亢進していること、②T-HI血管は、透過性亢進に密接に関係した大きなサイズのvesiculo-vacuolar organelleを豊富に保持すること、③T-HI血管は、コンブレタスタチンによっても血流が遮断されず、腫瘍血管破断後も高い透過性が維持され、多量のアルブミンがT-HIに移行、停留すること、④腫瘍辺縁部の癌組織は腫瘍血管が破壊されても、T-HI血管から栄養供給を受け、それによってその部位から癌が再発すること、⑤T-HI血管の高い血管透過性によりT-HI領域に顕著な浮腫が生じ、それによってその領域のドレナージ機能が低下すること、そして、⑥コンブレタスタチン前投与+ドキソルビシン封入ミセル投与が、ドキソルビシン封入ミセル単独よりも、LY80腫瘍の増殖を有意に抑制することを示した。腫瘍の増殖が進展するに伴い、また、コンブレタスタチン前投与によって、T-HI領域におけるドレナージ機能が低下し、高分子物質の腫瘍内停留と蓄積、すなわちEPR効果が起こることが強く示唆された。以上の結果から、「コンブレタスタチンによる微小転移巣へのEPR効果導入と機序の解析」という研究目標は、ほぼ達成された。しかし、論文がまだ出版されていないため、研究は完了していない。

今後の研究の推進方策

T-HIの微小環境、特に、その部位に誘導される一過性の浮腫が、コンブレタスタチンによる微小増殖巣へのEPR効果導入に重要であることが、本研究で、明らかになった。T-HIの微小環境は、腫瘍および正常組織の微小環境と比べて、血管透過性に大きな差があり、また、その循環はコンブレタスタチン単独処置では遮断されなかった。癌治療後の腫瘍辺縁部からの癌再発抑制、およびEPR効果による治療効果増強には、T-HIの微小環境におけるこの循環特性が密接に関わっていることは明らかであり、今後、さらに研究を進める意義があると考える。
なお、本研究で計画した実験は終了し、現在、論文投稿中である。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度に論文を投稿する予定であったが、追加実験(腫瘍血流遮断剤単独投与と放射線照射後腫瘍血流遮断剤投与とで、腫瘍-宿主インターフェイスへの物質移行にどのような違いが生じるかを検討する実験)を行う必要が生じ、論文の投稿が遅れているため、未使用額が生じた。
未使用額は外国人による英語論文校正費と、出版費(論文のカラー図表印刷費を含む)に使用する予定である。

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公開日: 2015-05-28  

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