研究課題
YB-1の発現レベルの亢進や核内局在は乳癌、卵巣癌、軟部肉腫、肺癌、グリオーマなどを含む様々ながん患者の予後不良因子である。特に乳癌においてはオンコジン活性を示すことが注目されている。我々はYB-1の下流標的遺伝子としてEGFRファミリーに注目し乳がんや胃がんを主な対象にした“がん克服”への新しい研究をスタートさせ、現在までに以下の研究実績を得た。1.胃がん細胞においてYB-1はHER2の発現をより特異的に制御し、ラパチニブの感受性を変化させた。さらに胃癌患者(n=111)においてYB-1の核内発現がHER2発現と有意(p=0.026)に相関していた。胃癌においてYB-1がHER2発現レベルの制御を介してトラスツズマブやラパチニブの治療効果に関与することを示唆した。2.子宮頸癌患者(n=204)においてYB-1の核内局在はHER2やEGFRと有意に相関し、予後不良因子であることが観察された。他方、透析腎患者(n=43)においてYB-1の核内局在とペロキシレドキシンやチオレドキシンの発現が腎細胞がんへの悪性進展へ深く関与することが明らかになった。子宮頸癌や腎癌においても、YB-1によるHER2発現制御及び酸化ストレス障害修飾ががんの悪性進展へ関与していることが示唆された。3.乳がん細胞においてYB-1/Tet-ONシステムを作動させYB-1の核内発現がHER2発現の亢進をERα発現の抑制をすることを観察している。YB-1核内発現がERα及びHER2との相関に関して閉経前後の乳癌患者を対象に現在検討を進めている(論文投稿準備中)。以上の知見に加えて、YB-1の発現を抑制する核酸抗がん剤の開発を現在進行させている。以上、YB-1が発症と進展に深く関与する乳癌において、YB-1によるHER2とERα発現に関与することを見出し、治療創薬に向けて新しい可能性を見出しつつある。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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