研究課題/領域番号 |
24650648
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
都島 由紀雄 順天堂大学, 医学部, 准教授 (20560684)
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研究分担者 |
鈴木 健司 順天堂大学, 医学部, 教授 (10415523)
高持 一矢 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30397369)
王 志明 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50306958)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
本年は最終的なプロトコールの完成に従事した。具体的には最新のエビデンスに基づいた化学療法のレジュメの選択に関して腫瘍内科専門医と、放射線照射量の設定に関しては放射線治療の専門家との慎重な議論を繰り返した。また必要症例数の設定など、統計学的手法を必要とする部分は専門の生物統計学者にコンサルトした。 最終的なプロトコールの要約は以下の通りとなった。本臨床試験の目的はSuperior Sulcus Tumorに対する同時化学放射線治療と外科手術による集学的治療の安全性と有効性を検証すること。化学療法に関しては腫瘍内科医との議論の結果、シスプラチン(CDDP)とテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(TS-1)の2剤併用療法(full dose)を選択した。放射線治療に関しては放射線治療医との議論の結果、化学療法と同時胸部照射(根治照射量66 Gy)とした。この化学放射線治療後の切除可能例に対して手術を施行する。以上の集学的治療によって周術期の安全性を担保した上で、予後の改善と局所制御率の向上が可能か検証する。 Primary endpointは3年生存割合とした。 Secondary endpointとしては全生存期間、無再発生存期間、再発形式、組織学的完全寛解率、完全切除根治率、morbidity/mortality、有害事象とした。 このプロトコールによってSuperior sulcus tumorに対する術前化学放射線治療(Cisplatin+TS-1+胸部照射66Gy)のPhase II trialを開始することに決定した。 本試験に必要なCase Report Formを作成、症例の登録・解析に必要なデータセンターの整備も完了した。SSTの症例数は少ないため、今後は専門病院の参加による他施設共同研究の可能性も追求する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
化学療法のレジュメ及び放射線容量の最終決定に至るに当初の予想以上の時間を要した。必要症例数の決定になどの統計学的手法に関しても生物統計の専門家にコンサルトする時間を必要とした。 本研究で化学療法をCDDP+TS-1療法とした理由としては、放射線照射と同時に施行しても血液毒性が軽く、full doseで投与可能であることが挙げられる。通常、第3世代の新規抗癌剤を含むプラチナ併用療法を放射線照射と同時に施行する場合、血液毒性のため抗癌剤は減量されて投与されるが、CDDP+TS-1療法は血液毒性が軽く、full doseでの投与が可能である。SSTは扁平上皮癌や低分化癌(未分化癌)の割合が通常の進行肺癌より高い。分化度が低いため、術前に非小細胞肺癌以上の組織学的診断が確定できない場合も多いため、組織型に関係なく有効性なレジメンはSSTに対しては有用である。 同時放射線治療を根治照射量66Gyとする理由としては、歴史的にSSTに対する集学的治療においては50Gy以上の照射線量では手術関連死亡及び合併症が高くなるとされていたため、 照射線量は30-45Gyとされてきたが、 放射線治療専門医との議論の結果、正常組織の障害を増大させることなく抗腫瘍効果を増大させる3Dを駆使した近年の定位放射線治療であれば、66Gyの根治照射線量であっても可能であるとの結論に達した。完全切除率と組織学的完全寛解率は、ともにSST切除後の重要な予後因子である。本試験では、完全切除率と組織学的完全寛解率を上げることで全生存率を向上させることを目的として放射線量を根治照射量の66Gyと設定した。 生物統計学者との議論の結果、閾値を50%、期待値を65%と設定、この条件で片側α=0.05、β=0.2で必要な症例数は45例と算出され、最終的な目標症例数は上記の算出数に不適格例および除外例等を考慮し、50例とした。
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今後の研究の推進方策 |
2013年5月の順天堂大学院内治験審査委員会に本試験を申請、承認を得た後、直ちに順天堂大学医学部附属順天堂医院・浦安病院・静岡病院・練馬病院・高齢者医療センターで随時登録を開始する予定である。登録期間は3年、追跡期間は5年、総研究期間は8年となる予定である。 主な解析対象集団を以下のように定める。登録された被験者のうち、重複登録や誤登録を除いた集団を 「全登録例」 とする。全登録例のうち、プロトコール治療の少なくとも一部が施行された被験者を「全治療例」、全治療例から「不適格例」 を除いた集団を「全適格例」、全適格例のうち、術前導入化学療法後に、外科的切除術が施行された集団を 「全切除例」 とする。 主要エンドポイントである3年全生存割合は全適格例を対象として以下のように解析する。登録日を起算日として、全生存曲線をKaplan-Meier法により推定する。3年時点での全生存割合を求め、さらにGreenwood公式から95%信頼区間を計算する。 副次的エンドポイントであり無増悪生存期間は全適格例を対象、登録日を起算日として無増悪生存曲線をKaplan-Meier法により推定する。全生存期間も同様に全適格例を対象、登録日を起算日として、全生存曲線をKaplan-Meier法により推定する。 本試験治療との関連が否定できない重篤な有害事象が発現した場合、有害事象報告書を基に効果・安全性委員会に有害事象についての検討を依頼する。効果・安全性委員会の検討結果を基に試験継続についての判断を検討を行う。 原則として中間解析の実施中も症例登録は続行するが、登録ペースが早ければ、研究代表者、研究事務局、統計解析責任者が協議の上で登録を一時中止の判断を行う。10%(5例)を超える治療関連死亡(TRD)が出た場合は発現した群を試験中止とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
統計解析、データマネジメント、および試験の品質管理者が勤務するデータセンターにおける人件費が主となる予定である。
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