研究課題
悪性中皮腫は高頻度にNF2-Hippo腫瘍抑制シグナル伝達系が不活性化している。その結果、転写コアクチベーターであるYAPが恒常的に活性化し、細胞周期を促進する遺伝子(サイクリンD1など)や結合組織成長因子(CTGF)の転写が亢進し、悪性中皮腫の増殖や進展を引き起こしている。昨年度は中皮腫において高頻度に欠失しているCDKN2A(p16)遺伝子に着目し細胞膜透過性機能ペプチドを投与し、中皮腫細胞株に対する腫瘍抑制効果を明らかにした。本年度は、YAP転写コアクチベーターが結合する転写因子TEADについて解析し、中皮腫の細胞増殖亢進への関与を詳細に明らかにする目的で実験を進めた。TEAD転写因子はTEAD1-4の4つのホモローグが存在することが知られているが、中皮腫細胞における個々の分子の役割は明らかになっていない。24株の悪性中皮腫細胞株からRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCR法にてTEAD1-4の遺伝子発現について検討し、発現レベルに差について検討した。次に、中皮細胞株(Y-MESO-27)および不死化中皮細胞株(MeT-5A)を培養し、培養開始期、対数増殖期、増殖停止期のそれぞれでセルライセイートを抽出して、YAPと結合するTEADを免疫沈降法にて比較検討した。その結果、TEAD3およびTEAD4が増殖停止期においてもYAPとの結合が持続することが明らかとなった。さらに、RNA干渉法によりTEAD1-4を個別にノックダウンしたところ、TEAD2, TEAD3のノックダウンで中皮腫細胞株の増殖が強く抑えられた。以上の結果は、YAPとTEAD転写因子の結合を阻止する上では、特定の(特にTEAD3)を抑制することが中皮腫細胞の増殖を阻止するためには最も効果的であることを示唆した。本研究計画の推進により、YAPの恒常的活性化にともなう細胞増殖・浸潤に際し、転写因子TEAD側でもその機能的な差を有することが明らかとなった。
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