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2012 年度 実施状況報告書

衛星リモートセンシングによる氷河サージの時空間変化の検出

研究課題

研究課題/領域番号 24651001
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関北海道大学

研究代表者

古屋 正人  北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60313045)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードglacier surge / Yukon / West Kunlun Shan / SAR
研究概要

「氷河サージ」とは,氷河の流動速度が平時に比べて数倍から数10倍も上昇する現象で,世界の特定の氷河で検出されてきた.しかし頻繁に起きる現象ではなく,特に現場観測の難しさから「寒冷氷河」や「多温氷河」でのサージの時間発展データは乏しく,その発生メカニズムも未解決である.本研究では氷河サージ発生メカニズムの解明を目指して,人工衛星搭載の合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar,SAR)のアーカイブデータを利用して,表面流動速度を高頻度に測定し,「氷河サージ」の時空間的発展を明らかにすることを目的とする.
平成24年度の研究実施計画では,西クンルン山脈,ユコン州(カナダ)ハバード氷河,スバールバル諸島に分布する氷河の流動速度を測定する予定であったが,ユコン州の氷河で意外な発見があったため,スバールバル諸島については測定していない.
西クンルン山脈においては,概ね計画通りに研究が進展し,36個の山岳氷河の流動速度の時空間変化を捉えて,25個のNormal型,4個をSurge型と分類したが,残る7個については下流部で停滞し,上流部だけが流動する,前二者のどちらとも言えないような分布が得られStagnant型と呼ぶ.同地域のZhongfeng氷河の流動速度の時空間変化から,Stagnant型の氷河はSurge型の静穏期を示している可能性が高い.
ユコン州の氷河は,当初はハバード氷河で報告された2009年のサージについて調べる予定でいたが,サージとは無関係に,夏季よりも冬季の方が流動速度が速く,また上流から下流に伝搬するという従来知られていなかった新知見を得ることができた.そのため,ユコン地域の出来るだけ広い領域の氷河流動速度を調べるべく,当初の計画を若干変更した.また当初の計画には無かったが,南パタゴニア氷原の流動速度分布も求めた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度には人工衛星搭載の合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar,SAR)のアーカイブデータを利用して,山岳氷河の表面流動速度を高頻度に測定し,「氷河サージ」の時空間的発展を明らかにし、次年度以降は数値モデルの構築を通じて流動速度変化のメカニズムを解明することが本研究の目的だった.
初年度の達成度としては、西クンルン山脈の流動速度分布、ユコン準州や南パタゴニアの山岳氷河の流動速度の時空間分布を得ることができた。西クンルン山脈については、Yasuda and Furuya (2013, Remote Sensing Environment)として出版済みであり、後二者についても投稿準備中と投稿中であり、ほぼ計画通りか想定以上に順調といえる。特に、ユコン準州の冬季加速については従来は知られていない画期的な発見である。冬季加速がどの程度普遍的に存在するかは重要な研究テーマでアリ、今後の研究計画にも若干の変更が必要である。

今後の研究の推進方策

氷河流動速度のデータは、スバールバル諸島を除けば、概ね当初計画していた通りに蓄積している。今後の研究推進策としては、大きく二つの方向がある。
一つ目は、流動速度の時空間分布データを、空間的にも時間的にもさらに拡充することである。そのために、これまでに調査した領域を時間方向に拡充する以外に、研究対象領域として北極圏やアジア高山域にも注目していきたい。衛星データについては、取得済みのアーカイブデータについては出来るだけ利用していく一方、新規に衛星観測データを取得することも必要である。日本国内のSAR衛星データは現在取得出来ないが、ドイツのTerraSAR-Xデータの取得のために、研究提案を申請する予定である。
二つ目の方策は、数値モデルの構築である。観測された流動速度データを出来るだけ物理法則に基づいて説明することにより、流動メカニズムを解明していくことが必要である。サージ現象も含めた氷河流動の時空間変化は、氷体そのものの変形という長い時間スケールと、季節変化やそれ以下のもっと短い時間スケールが複合されている。まずは一次元ないしは二次元の簡略な数値モデルを構築したい。そのために必要なソフトウェアの導入を予定している。

次年度の研究費の使用計画

経費の節減によって生じた前年度の使用残金については、有限要素法ソフトウェア購入に使用する。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (11件)

  • [雑誌論文] Short-term glacier velocity changes at West Kunlun Shan, Northwest Tibet, detected by Synthetic Aperture Radar data2013

    • 著者名/発表者名
      Takatoshi Yasuda, Masato Furuya
    • 雑誌名

      Remote Sensing and Environment

      巻: 128(21) ページ: 87-106

    • DOI

      10.1016/j.rse.2012.09.021

    • 査読あり
  • [学会発表] Surge-type Glaciers in the West Kunlun Shan, NW Tibet2012

    • 著者名/発表者名
      Takatoshi Yasuda, Masato Furuya
    • 学会等名
      American Geophysical Union Fall Meeting
    • 発表場所
      Moscone Center, San Francisco, California
    • 年月日
      20121203-20121207
  • [学会発表] Glacier Surge Dynamics in Yukon Territory observed by Synthetic Aperture Radar2012

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Abe and Masato Furuya
    • 学会等名
      American Geophysical Union Fall Meeting
    • 発表場所
      Moscone Center, San Francisco, California
    • 年月日
      20121203-20121203
  • [学会発表] Spatial and Temporal Glacier Flow Velocity Changes in Southern Patagonia Icefield: 2002-20112012

    • 著者名/発表者名
      Minami Muto and Masato Furuya
    • 学会等名
      American Geophysical Union Fall Meeting
    • 発表場所
      Moscone Center, San Francisco, California
    • 年月日
      20121203-20121203
  • [学会発表] SAR ならび光学センサーによる西クンルン山脈における氷河サージの観測2012

    • 著者名/発表者名
      安田貴俊, 古屋正人
    • 学会等名
      日本測地学会第118回講演会
    • 発表場所
      仙台市福祉プラザ
    • 年月日
      20121031-20121102
  • [学会発表] 合成開口レーダーで捉えたユーコン地域の氷河サージの動態2012

    • 著者名/発表者名
      阿部 隆博, 古屋 正人
    • 学会等名
      日本測地学会第118回講演会
    • 発表場所
      仙台市福祉プラザ
    • 年月日
      20121031-20121102
  • [学会発表] 合成開口レーダーでとらえた南パタゴニアの氷河における流動速度の時空間変化2012

    • 著者名/発表者名
      武藤 みなみ, 古屋 正人
    • 学会等名
      日本測地学会第118回講演会
    • 発表場所
      仙台市福祉プラザ
    • 年月日
      20121031-20121102
  • [学会発表] 合成開口レーダーによる北西チベット高原西クンルン山脈における氷河サージの観測2012

    • 著者名/発表者名
      安田貴俊, 古屋正人
    • 学会等名
      雪氷研究大会
    • 発表場所
      広島県福山市立大学
    • 年月日
      20120923-20120927
  • [学会発表] ALOS/PALSARで捉えたユーコン地域におけるサージ氷河の動態‐流動速度の時空間変化‐2012

    • 著者名/発表者名
      阿部 隆博, 古屋 正人
    • 学会等名
      雪氷研究大会
    • 発表場所
      広島県福山市立大学
    • 年月日
      20120923-20120927
  • [学会発表] 合成開口レーダーでとらえた南パタゴニアの氷河における流動速度の時空間変化2012

    • 著者名/発表者名
      武藤 みなみ, 古屋 正人
    • 学会等名
      雪氷研究大会
    • 発表場所
      広島県福山市立大学
    • 年月日
      20120923-20120927
  • [学会発表] 合成開口レーダーで捉えた西クンルン山脈の山岳氷河表面速度場の多様性2012

    • 著者名/発表者名
      安田貴俊, 古屋正人
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合 2012年度連合大会
    • 発表場所
      千葉県幕張メッセ
    • 年月日
      20120520-20120525
  • [学会発表] ALOS/PALSAR と Enviat/ASAR に基づくパタゴニア氷河の流動速度の時空間変化2012

    • 著者名/発表者名
      武藤 みなみ, 古屋 正人
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2012年大会
    • 発表場所
      千葉県幕張メッセ
    • 年月日
      20120520-20120525

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公開日: 2014-07-24  

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