研究課題/領域番号 |
24651003
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
下野 綾子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30401194)
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キーワード | 植生変化 / 写真解析 / 市民との協働 |
研究概要 |
近年、世界各地の高山帯で植物群集の変化が報告されるようになった。これらの変化は過去の記録があるからこそ検出できるのであり、多くの高山地域では変化の有無を判断する科学的な調査が不足している。この不足を補えるのは、唯一過去に撮影された写真であり、写真は調査記録に代わる客観的な記録となりえる。そして過去に撮った写真と最近撮った写真の比較ができれば、植生の変化を検討することが可能となる。本研究では写真を活用した植生変化の解析手法を確立することを目的とする。 平成25年度は、昨年作成した写真データベース(http://mountain-photo.org/)への登録写真の充実化をはかるため、マスメディアと連携し、広く山岳愛好家に昔の山岳写真の寄稿を呼びかけた。寄せられた写真のうち、とくに近年シカの食害により植生変化が問題になっている南アルプスで最新写真の撮影を行い、新旧写真の比較から植生変化を検討した。 新旧写真の比較において、基準点をもとに、新写真に過去写真を投影する幾何補正を行い、植生の変化しているピクセルを抽出した。なお新旧写真の重ね合わせにおいて、レンズの歪みの違いや撮影地点のずれに起因する誤差が生じるので、詳細な定量化にはそれらの誤差を極力抑えるような手法の検討が必要である。 あわせて、日本の北アルプスを中心に1960年代と2000年代の空中写真の解析を行い、新旧の植生変化を広域で比較しうる詳細地形図と、植生図を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は市民団体・マスメディアとの連携を強化し、昨年作成した写真データベースの充実化を図った。あわせて広域をカバーする空中写真をもとに、新旧時代のの植生図を作成した。 これまで収集した地上写真および空中写真の比較により最終年度には植生変化の程度と有意な関係のある立地環境(標高・方位・斜度・気象等)を抽出し、日本の高山帯の植生変化について定量的評価が行えると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
植生変化の定量化:植被の有無や植生の違い(ササ原、広葉草原、低木帯等)を目視判読し、変化が認められた場所については、写真の歪みを取り除いた正射投影画像を作成し(オルソ化)、地理座標をつける。植被の有無や異なる植生の領域の輪郭を、GISソフトによりポリゴンで記述し、面積を計算する。新旧写真の値を比較することで植生変化の程度を定量化する。地上写真でカバーできない部分については、空中写真に基づいて作成した植生図を参照する。 とりまとめ:整備した写真をもとに植生変化の程度と有意な関係のある立地環境(標高・方位・斜度・気象等)を抽出し、変化の原因・メカニズムについて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
写真をスキャンと情報整理を担当するバイトを雇用するため謝金を60万確保していたが、条件に見合う雇用者が見つけられなかった。そのため写真のスキャンは一部業者への委託費に振り替えた。 次年度の研究費465,202について、132,955円については既に年度末に使用済みである(年度末計上で次年度払分)。現在も市民からの写真の送付が続いているため、写真収集に関する市民への情報発信に要する通信費、業者へのスキャン委託費としての使用を予定している。
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