• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

直達発生種の遺伝的集団構造に基づく巨大津波による三陸沿岸の生態系撹乱履歴解明

研究課題

研究課題/領域番号 24651004
研究機関東京大学

研究代表者

小島 茂明  東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (20242175)

研究分担者 松政 正俊  岩手医科大学, 共通教育センター, 教授 (50219474)
キーワード三陸海岸 / 巨大津波 / ホソウミニナ / ウミニナ / 遺伝的多様性 / 集団構造
研究概要

震災前に日本および韓国で採集、保存されていたホソウミニナを用いて、マイクロサテライトマーカーによる集団構造解析をおこなった。ほぼ全ての地域集団間に有意な遺伝的分化が検出されたにも関わらず、青森県尾駮沼の集団と愛知県汐川干潟の集団間および岩手県宮古湾と宮城県万石浦の集団間には遺伝的差異がみられなかった。尾駮沼および宮古湾は、より近隣の地域集団との間に有意な遺伝的差異が示されており、本種がプランクトン幼生期を持たない直達発生をおこなう事から、こうした遺伝的類似性は最近起きた非意図的な人為的移動の結果と考えられる。実際、ミトコンドリアDNAのデータを綜合した解析から、尾駮沼の集団が移入個体のみで形成されたものであるのに対し、宮古湾の集団は移入個体と在来個体に由来する遺伝子を併せ持つ事が示された。これらの結果は、過去の分布調査や潮干狩り用のアサリの輸送記録と整合的であった。本研究の目的である、各地域集団の遺伝的特性に基づく履歴復元の精度を向上させるためには、こうした人為的移入の影響を取り除く事が必要である。継続的な野外調査から、本種の宮古湾個体群密度が2013年に急激に増加し、震災前の状態に近づきつつある事が示された。塩分変動や乾燥への耐性が比較的ため、津波の様な大規模撹乱に遭遇しても少数の個体が生き残る可能性が高い種では、直達発生という繁殖様式が撹乱後に確実に遺伝子を残す戦略として有効であると考えられる。一方、津波によって新たに形成された潮間帯への移入は認められず、自然な状況では、分散能力が極めて低いことも確認された。
ホソウミニナに近縁で、しばしば同所的に分布するウミニナについて11種類のマイクロサテライトマーカーを開発し、それらを一度に解析できるマルチプレックス系を設計し、有効性を確認した。この解析系を用いて、三陸海岸の万石浦の集団の遺伝的特性を解析した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

過去を復元する基礎となる震災前の三陸海岸のホソウミニナ集団の集団構造について、ミトコンドリアDNAに加えて、核DNA上にあるマイクロサテライトのデータを揃える事ができた。また、三陸海岸で震災前に起きた人為的移入の影響を取り除く事が可能になった。ホソウミニナに加えて、ウミニナについてもマイクロサテライトのマルチプレックス解析系が利用可能になり、多数の個体の遺伝子型を効率的に判定する事が可能となったので、ホソウミニナと異なりプランクトン幼生期を持つウミニナと比較することで、より精度よく、三陸海岸各地域の個体群の履歴を推定する研究を進める事が可能になった。

今後の研究の推進方策

三陸海岸におけるウミニナの生活史調査および遺伝的集団構造解析をおこなう。ホソウミニナとウミニナを対比させながら、両種の各地域個体群の履歴を復元する。

次年度の研究費の使用計画

マイクロサテライトマーカーによるホソウミニナ集団の遺伝的構造を解析したところ、震災前に人間活動に伴う個体移動が起きていた事が明らかになった。地域集団の遺伝的特徴から過去の履歴を復元するためには、その様な人為的移動の影響を取り除く必要があるため、定量的な解析をおこなった。この作業に時間を要したため、今年度当初予定していた解析の一部を次年度おこなう事として、予算を繰り越した。
三陸海岸におけるウミニナの生活史調査のために旅費と消耗費を支出する。三陸海岸におけるウミニナ集団の遺伝的構造解析のために消耗品費を支出する。また、これまでに得られたホソウミニナのデータを用いた地域集団の履歴復元のための消耗品を支出する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Isolation and characterization of microsatellite loci in the intertidal snail Batillaria multiformis (Mollusca Gastropoda)2014

    • 著者名/発表者名
      Itoh, H., S. Kamimura, K. Hirose and S. Kojima
    • 雑誌名

      Conservation Genetics Resources

      巻: 6 ページ: 193-195

    • DOI

      10.1007/s12686-013-0046-y

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi