「化石DNAの包括的解析の手法の確立」として、古環境復元の研究に適しているとされる日本海の堆積物(日本海東縁ガスハイドレード調査MD179にて採取)を用いて、「DNA配列に基づく起源生物の特定」、「生体化石との比較」、「古生態系の復元」を実施した。さらに、「環境変動に呼応した古生態系の変化が化石DNAに記録されているか」を調べた。本研究を実施する際には、堆積物試料及びDNA試料の品質管理(試料の汚染や劣化がないこと)に注意を払った。 ①海底堆積物から化石DNAを抽出し、DNA配列に基づく起源生物の特定を行って、「化石DNAの包括的解析手法の確立」の再現性を確認した。 ②表層から深部までの連続したコア(海底下8-30メートルの堆積物)を分析し、環境変動に呼応した古生態系の変化が化石DNAに保存されているかを調べた。 ③「DNA配列に基づく起源生物の特定」の結果と従来の形態により分類された「生体化石の情報」を比較して、化石DNAからのみ取得される古生態系を復元する上で鍵となる情報がないかを調べた。 結果、表層から深部までの連続した堆積物(約3千~10万年前に堆積)から、抽出した化石DNAを分析(配列決定)し、生体化石としても分析されている海洋性プランクトン(珪藻や放散虫)の他、陸上の植物由来の化石DNAを再現性良く検出することに成功した。最終氷期中の亜氷期と亜間氷期の堆積物からは、それぞれ異なる生物種が化石DNAによって検出された。化石DNA解析は、過去の生態系や古環境を復元出来るツールとして用いることができる可能性が示された。結果は論文としてまとめ、現在、投稿中である。
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