研究課題/領域番号 |
24651006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
春日 郁朗 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20431794)
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研究分担者 |
栗栖 太 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30312979)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 微生物ループ / 藻類産生有機物 / DNA-SIP / FTMS |
研究概要 |
今年度は、藻類産生有機物(AOM)を調製するために、6種類の無菌淡水藻類株(藍藻類:Microcystis aeruginosa NIES-843、Anabaena flosaquae NIES-73、緑藻類:Chlorella vulgaris NIES-2170、Scenedesmus acuminatus NIES-92、珪藻類:Achnanthidium minutissimum NIES-372、Aulacoseira granulata NIES-333)を対象として取り上げ、培養条件の検討を行った。培地中の緩衝剤などの有機物を取り除き、炭酸水素ナトリウムを添加した条件下での培養方法を検討した結果、CSi培地を改変することでこれらの藻類を培養可能であることが確認された。しかし、Anabaena flosaquae およびAulacoseira granulata の培養は不安定であり、対象藻類から外すことにした。 AOMを用いたDNA安定同位体プロービング(DNA-SIP)については、関連文献の調査を行うと共に、湖沼水から核酸抽出を試み、DNA-SIPに必要な量の核酸を得るために必要な湖沼水の量を評価した。 AOMをフーリエ変換質量分析(FTMS)で分析する条件を検討したが、PPL固相抽出カートリッジでの回収率が非常に低く、多糖類などが主成分と想定されるAOMをFTMSで分析することは困難であることが示された。 AOMを利用する微生物やAOM由来の有機物が実際の湖沼でどのような動態を示すのかを評価するために、相模湖、津久井湖での定期採水を毎月1回の頻度で開始し、微生物群集の量・組成をモニタリングすると共に、溶存有機物の特性をFTMSによって分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
緩衝剤などの有機物を培地から除き、炭酸水素ナトリウムを添加した系での藻類培養の試行錯誤に時間を要し、当初の目的である安定同位体標識したAOMの調製およびDNA-SIPの実施は未着手となった。しかし、本研究の基盤である藻類培養条件を確立できたことは大きな成果であり、安定同位体標識したAOMの調製の道筋はついた。DNA-SIPに必要な核酸抽出の条件検討は予定通り終了しているので、次年度にはただちに安定同位体標識したAOMを調製し、DNA-SIPを適用できると考えられる。 AOMのFTMS分析については、固相抽出の段階で低回収率の問題が浮上し、当初目的通りの分析には至らなかった。現状のアプローチでは、AOMをFTMSで分析することは困難であると想定されるので、これ以上の条件検討は一旦取り置き、微生物による分解産物の分析に焦点を当てることが現実的と考えられる。なお、相模湖・津久井湖の湖沼水については、固相抽出によって十分な量の溶存有機物が回収されており、FTMSでの分析には支障がないことを確認できている。
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今後の研究の推進方策 |
確立した培養方法に基づいて、13C標識した炭酸水素ナトリウムを添加してMicrocystis aeruginosa、Chlorella vulgaris、Scenedesmus acuminatus 、Achnanthidium minutissimumを培養し、13C-AOMを調製する。これらのAOMを、相模湖・津久井湖の湖沼水に添加して分解実験を実施し、経時的に試料を採取してDNA-SIPを行うことで、異なる藻類由来のAOMがどのような微生物に利用されるのかを明らかにする。また、分解に伴って溶存有機物組成にどのような変化が現れるのかについて、FTMSによる分析を試みる。これらの知見は、相模湖・津久井湖の定期観測の結果と照合し、実湖沼での微生物ループと溶存有機物の特性との関係について考察を行う予定である。 また、実湖沼水に直接13C標識した炭酸水素ナトリウムを添加して、元々含まれる藻類に由来する13C-AOMを調製し、DNA-SIP及びFTMSによる解析を行い、純粋藻類株を用いた結果と比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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