研究概要 |
安定同位体プローブ法により、藻類産生有機物を起点とする湖沼微生物ループの構造を評価した。単藻無菌株(Microcystis aeruginosa, Scenedesmus acuminatus)を13C標識重炭酸で培養し、13C標識された藻類産生有機物を神奈川県津久井湖から採水した湖水に添加して培養した。藻類産生有機物を添加すると、培養1日後にかけて急速な細菌増殖が観察された後、全菌数が急減するという現象が観察された。培養1日後の試料を比重分画し、16S rRNA遺伝子の組成を解析した結果、Limonohabitans属に近縁な細菌群が優先して藻類産生有機物を同化していることが明らかになった。また、18S rRNA遺伝子を解析したところ、培養1日後には襟鞭毛虫に近縁な微生物が、培養14日後には繊毛虫に近縁な微生物がそれぞれ藻類産生有機物由来の炭素を同化していることが確認された。このことから、これらの原生生物はLimnohabitans属あるいはLimnohabitans属を捕食した原生生物を餌にして増殖していることが推測された。また、津久井湖における調査からLimnohabitans属と藍藻類の存在量には密接な関係があり、実際の湖沼においてもLimnohabitans属が藍藻由来のAOMを起点とする微生物ループにおいて重要な役割を担っていることが推察された。
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