研究課題/領域番号 |
24651014
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松本 淳 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (70402394)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 大気化学反応 / 有機硝酸 / 揮発性有機化合物 / 二次生成物 / 光化学オキシダント / 室内実験 / 化学的摂動法 / 包括計測 |
研究概要 |
揮発性有機化合物 VOCを前駆体とする大気中での二次有機エアロゾル粒子SOAの生成過程における中間生成物として、また同時に、光化学オキシダント問題においてオゾン生成と競合する二次生成物として、有機硝酸類ANsが注目されている。本研究では、所有する熱分解-レーザー誘起蛍光法(TD-LIF)ANs全量計測装置を活用し、大気試料にラジカルを添加・反応させる化学的摂動法を組み合わせることにより、大気試料の有機硝酸生成能の包括計測に挑戦する。本年度は、以下を実施した: (1)十分な反応時間を確保した反応容器(試作版)として、容積30Lのテフロンバッグを用意し、そこにVOC標準試料とラジカルおよびNOxを積極的に混合・反応させる実験系を構築した。この実験系をTD-LIF装置に接続することにより、二次生成するANs全量を測定し、有機硝酸生成能の算出・検証を目指すことになる。 (2)上記の「試作版」を用いて、二次生成するANs全量の計測を試みた。2ppmvのリモネン標準試料にオゾンとNOを混合して室温にて30分間反応させたところ、57ppbv程度のANs全量を検出した。VOCへのラジカル(オゾン)・NOx混合による二次生成ANsの検出に成功し、有機硝酸生成能計測の実現可能性を示した。 本年度は、有機硝酸生成能評価に最低限必要となる計測システムの構築までを実施した。今後は、VOC濃度に対する依存性など本システムの基礎的な特性を詳細に検証し、「改良版」反応容器を構築しつつ、実大気観測試験への実用化を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、大気中でVOCとラジカル等との反応の際に二次生成する「有機硝酸類(ANs)」について、大気試料にラジカル等の「摂動」を与えて反応を加速してANs生成量をモニターすることで、ANs生成量を評価し、大気化学反応の実用の把握・解明に貢献することを目指している。今年度は、試作版反応容器を用いた反応実験において二次生成ANsの定量に成功するなど、おおむね順調に進展している。このことは、今後の研究遂行に十分に貢献すると期待される。ただし、研究代表者が本年度から異動したことに伴い、実験装置等も移動して立ち上げなおした事情もあり、当初計画以上には進展できなかった。特に、反応容器の構築とこれを用いた実験に関しては「試作版」での初期試験に留まった。以上のことから、上記区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画にしたがって、今年度までに構築した二次生成ANs計測システムを活用し、以下を推進する方針である: 1)計測システムの特性に関する基礎実験の蓄積: VOC標準試料の濃度に対する二次生成ANs量の依存性など、有機硝酸生成能評価の基盤となる特性の把握・蓄積を進める。 2)反応容器の改良: 大気試料へのラジカル等の混合のための反応容器(改良版)を構築・確定する。具体的には、混合に関する制御(配管・継手・容器の固定・層流か乱流か・滞留時間、等)を改善する。これにより、有機硝酸生成能計測の安定性・再現性・信頼性の向上を図る。 3)実大気観測試験: 実際の外気について有機硝酸生成能の測定を試みて、本装置の実用性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は本年度に構築予定であった「改良版反応容器」の製作については、研究代表者の異動等の事情もあり、また計測システムの一層の検証も必要なので、次年度に実施する。また、計測システムの基礎実験の蓄積についても、次年度に追加が必要である。そこで「次年度の研究費」を、主として以下に使用する: ・改良版反応容器の製作(設計、工作、配管・継手、試料の流れの制御、ラジカル発生混合系、等) ・基礎実験用の消耗品の調達(試料ガス、試薬、配管・継手、等) 特に、反応容器の改良には、本研究費の役割が重要となっている。
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