揮発性有機化合物VOCの大気化学反応に伴う二次有機エアロゾル粒子SOAの生成中間体の一種として、さらに光化学オキシダント問題においてオゾン生成と競合する二次生成物として、有機硝酸類ONsが注目される。本研究では、熱分解-レーザー誘起蛍光法(TD-LIF)ONs全量計を活用し、試料にラジカルを反応させる化学的摂動法を組み合わせて、ONs生成能の包括計測に挑戦した。前年度までに、(1)試作版バッチ式反応容器の構築、(2)試作容器を用いたVOC-NOx-ラジカル反応に伴う二次生成ONs計測試験、を完了した。今回は研究の最終年度として、下記を実施した: (3)反応容器の改良: 試料の安定な供給と混合のため、堅牢なガラス容器にガスを流通させるフロー式反応容器に変更した。(A)高濃度試料向け小型容器、(B)実大気など低濃度試料向け大型管、(C)中間的な中型管、の3種の容器を構築し、目的に応じた選択を可能とした。VOCの反応相手はO3とOHラジカルから随時選んだ。 (4)反応容器の特性把握: 各流量に対する二次生成ONs検出効率の依存を調べて条件を決定し、各反応容器のONs生成能測定性能を評価した。 (5)ONs生成能評価: イソプレン、リモネン、α-ピネンのO3反応に伴うONs生成量を測定し、VOC濃度とONs生成量の相関直線の傾きとしてONs生成能を評価して、成分間での相対比較を実現した。さらに、NO+RO2反応におけるONs生成分岐比について、LIF法による包括計測に基づく把握に成功した。実大気試料の測定も試みたが、現状では有意な信号を得られなかった。 この結果、VOC標準試料のONs生成能を直接把握できるようにした。多種多様なVOCの中にはONs生成特性が報告されていな成分も多く、本手法を活用したONs生成能データベースの充実が期待される。
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