研究課題/領域番号 |
24651016
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
牛尾 収輝 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (50211769)
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キーワード | 海洋科学 / 環境変動 / 極地 / 南極 / 海氷 |
研究概要 |
南極大陸沿岸域における海氷変動、特に多年性の沿岸定着氷の変動に関する物理機構を解明するために、海氷成長・融解に関する現地観測データを取得する無人観測システムの開発を行い、試作システムを製作した。前年度に行った研究代表者、連携研究者および観測システム製作経験を有する企業の技術者との打合せ結果にもとづいて、観測システムを設計・試作、随時連絡を取りつつ、完成したシステムの常温下における試験運用を行った。概ね良好な結果が得られ、南極の現場に持ち込む目途を立てた。 平成25年度に同システムを南極海氷域の現場に持ち込むべく、同年度半ばには梱包、輸送作業を進めた。年度終盤には、システムの設置場所の候補選定のため、南極昭和基地付近において現地観測を実施し、そのデータ解析を進めた。現場観測においては、第55次南極地域観測隊の同行者として派遣した研究協力者(大学院学生)の支援の下で、貴重な夏季観測データを取得することができ、今後の本観測システムで計測されるデータの妥当性検証に活用できる見通しがついた。 また、南極大陸沿岸域の既存データおよび最新の衛星観測データを用いてさらに解析を進めた結果、特に最近数年間では、多雪が海氷成長に及ぼす影響の重要性が明らかになった。多雪をもたらした、広域の大気環境の実態と年々変動の特徴を理解することも必要となり、沿岸域の降雪や低気圧活動など、年々変化の特徴を捉える上で適切な指標を見出すことも念頭に置いて解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画二年目の第一目標としていた観測システムの耐寒試験を十分に行うことができなかった。既存データおよび最近現地で採取した海氷試料を解析した結果、海氷成長や維持に及ぼす積雪の果たす役割の重要性について定量的に明らかにする課題でも、一次元モデル化がやや遅れている。この背景には研究代表者が55次南極地域観測隊に参加することとなったため、前述の耐寒試験を含めて国内研究開発に、当初予定していた十分な時間を充てることができなくなったことが理由の一つである。しかし、南極の現地で進める観測データ取得やシステム、特にセンサの点検作業を行うことについては有利な状況となっている。 なお、これまで得た知見にもとづいて、過去数年から十数年規模の沿岸海氷、特に昭和基地周辺の定着氷の年々変化の特徴を観測船「しらせ」の砕氷航行支援上の参考資料とすることへ貢献できた。この観点の研究は、研究代表者所属機関で継続中のプロジェクト研究と連携させて、引き続き効果的に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、前年25年度に製作した観測システムを用いて、現地の南極において試験データを取得する。また、最終年度として当初計画に変更はなく、「計測データ解析と成果とりまとめ、将来計画に向けた検討」および「成果発表および報告書作成」に従って、研究成果と総括、さらに次の研究への発展に向けた計画検討と研究申請を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究協力者(大学院学生)を第55次南極地域観測の同行者として現地派遣するに当たって、国内事前打合せおよび南極域派遣に係る旅費の総額が当初見積もりより、低額で抑えられたため。 平成26年度に計画しているデータ・試料解析のために、連携研究者または研究協力者を国内出張させる際の旅費に充てる。
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