研究課題/領域番号 |
24651016
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
牛尾 収輝 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (50211769)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 海洋科学 / 環境変動 / 極地 / 南極 / 海氷 |
研究実績の概要 |
南極大陸沿岸域における海氷変動特性、特に多年性の沿岸定着氷の分布状態の季節・年々変化に関する物理機構を解明するために、海氷の成長・融解に関する現地観測データを取得する無人観測システムの開発を行い、試作システムを作成、南極昭和基地に持ち込んだ。25年度終盤から26年度序盤にかけての期間である南極域の夏期に、同システムの設置場所選定のための海氷調査として、氷厚・積雪深計測および氷の割れ目(クラック)有無の確認を行い、設置地点候補領域を絞り込んだ。システム外観の日常的な点検や計測データの伝送等を安全かつ円滑に行うことに適した地点を選定した。同時に、昭和基地の屋内において無人観測システムの動作試験を行った。しかし、センサ部の動作は良好であったが、データ収録部分に動作不良が認められたため、十分なデータ取得には至らなかった。 海氷の現地調査および観測システムの準備と並行して、衛星観測データ解析による海氷変動の実態把握を進めた。その結果、過去6年間のうち5か年において顕著な多雪傾向が認められ、多年性の沿岸定着氷を厚い状態で維持していることに深い積雪層の形成が寄与していることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
南極昭和基地に持ち込んだ無人観測システムの試作機の動作不良が認められたため、当初予定していた通年にわたるデータ取得に至らなかった。しかし、不具合箇所の改良点を洗い出すことができ、今後のシステム開発に向けて、研究方針を明確にすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度までに南極昭和基地において取得、蓄積された現地観測データ、および広域の海氷・大気観測データ等を活用して総合的に解析する。科学的な知見を得るために、データ処理・解析ソフトウェアを用い、本研究課題による一連の成果をもとに、今後の研究の発展に向けた観測システムの開発準備を進め、国内外の学会やシンポジウムにおいて発表する。研究期間を延長した平成27年度が最終年度となり、計測データ解析と成果とりまとめ、さらに将来の研究計画に向けた検討、報告書作成を行うことによって本研究を総括する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に南極域で取得する現地観測データを国内連携研究者および研究協力者と共同解析、議論する計画であった。しかし、データ取得と初期処理が同年度後半になったため、当初予定した成果発表のための連携研究者等の国内出張の予定を延期する必要が生じた。また、本課題の研究代表者が平成26年度末に南極から帰国したことから、次年度に当たる平成27年度も継続してデータ解析、連携研究者等との議論を行う計画に変更したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に南極域で取得した現地観測データに加えて、既存の海氷・大気観測データ等も活用して総合的に解析することによって有益な知見を得ることが期待でき、その解析作業に使用するデータ処理・解析ソフトウェアを購入する。本課題による一連の成果にもとづいて、今後の研究発展に向けたシステム開発の準備および国内外の学会、シンポジウムにおける研究発表を行う計画とし、次年度使用額はこれらデータ解析費と旅費に充てる。
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