研究課題
「地球温暖化」は、地球上の生物圏全体がその影響を被る今世紀最大の環境問題である。大気中二酸化炭素濃度の増加速度を考えると、これまで地球が経験したことのない速度で上昇していることから、地球史上最大の問題とも言える。この環境問題に対し、気温上昇や海水面上昇および海洋酸性化など地球規模の危惧がなされる一方で、環太平洋における地域規模の気候変化について、特に我が国における実態を明らかにした研究例はほとんどない。そこで我々は、湖沼や汽水域に堆積した年縞堆積物(木の年輪のように縞模様に毎年の堆積が記録された堆積物)を利用し、過去100~200年程度まで遡り、年や季節ごとの湖水の表層水温復元を行い、人類の生存圏内において、具体的にどの程度の気候変化が生じるのか、或はすでに生じているのかについて明らかにする。さらに、中国の砂漠起源のダスト(石英粒子)に記録された偏西風の卓越場の気候変動への応答結果およびそれに伴うアジア夏季モンスーンや冬季モンスーンの盛衰に対して湖沼環境がどのように応答して変動してきたのかについて明らかにすることを目的として本研究を実施してきた。具体的には、地元の自治体や漁協の協力を仰ぎながら定期的(毎月或は2ヶ月に1回)に湖水(20リットル程度)を採取するとともに、湖水の水温・塩分の測定も行っていただいた。懸濁粒子をろ紙上に回収し、凍結乾燥させ、Harada et al. (2003)の手法を用いてアルケノンを抽出し、濃度分析を行った。約2年にわたる湖水中の懸濁粒子に含まれるアルケノン不飽和指数と現場水温との関係から、従来海洋において用いられてきた、汎世界的な水温とアルケノン不飽和指数の経験式は湖水では成り立たないことが明らかとなり、新たな経験式を構築することができた。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)
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