生物炭酸塩骨格中に含まれる微量元素の化学形態を指標として、古環境を読み解く新しい分析手法の開発を実施した。目的とする元素吸収端近傍でX線エネルギーを変化させ、軟X線吸収分光法によって元素の化学形態を識別すると同時に、試料位置を走査しながら蛍光X線信号を検出し、化学形態を識別した元素分布を測定する手法を確立した。本手法を宝石サンゴ骨格中の硫黄の分析に適用し、有機硫黄ならびに無機的硫酸イオンが混在するなかで、無機硫酸が成長線と相関することを明らかにした。環境指標として微量元素を正しく解釈するためには、化学形態を識別した空間分布測定が不可欠であることを示し、古環境復元へと展開する足掛かりを築いた。
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