研究課題/領域番号 |
24651022
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
林 武司 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (60431805)
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研究分担者 |
安原 正也 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (40358205)
中村 高志 山梨大学, 医学工学総合研究部, 特任助教 (60538057)
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キーワード | 都市域 / 水循環 / 地下水涵養 / 上下水道漏水 / PPCPs / 地下水汚染 / マルチトレーサー / マルチアイソトープ |
研究概要 |
首都圏を擁する武蔵野台地を流れる典型的な都市河川の流域を対象に,降水や上下水道漏水といった地下水の起源の評価や,汚染を含めた水質形成プロセスを解明することを目的として,調査を実施した.特に本研究では,新たな環境汚染物質として問題視されている生活排水中の医薬品・パーソナルケア用品(PPCPs)に着目し,地下水中でのPPCPs組成の季節変動や空間的な分布の特性を検討した. 郊外に位置する上流域と市街地である下流域において,浅層地下水や湧水,河川水を採取し,それらの水質組成や環境同位体性状,大腸菌・大腸菌群数,PPCPs組成を把握した.水質組成ならびに環境同位体性状に基づいて地下水の起源を検討した結果,いずれの地下水試料においても下水漏水の寄与があると判断され,その寄与率は数%~約40%と見積もられた.また降水・水道漏水の寄与率は,ともに数%~約90%と見積もられた.一方,下水漏水の指標である大腸菌・PPCPsに関しては,大腸菌は上流域・下流域ともに地下水試料中からは検出されなかったが,PPCPsについては1~複数種類の物質が全ての地下水試料から検出された.これらのPPCPsは解熱鎮痛消炎剤など様々な用途に用いられており,土壌中で分解・吸着されにくいとされるものであった.ただし,PPCPs組成の季節変動に着目すると,検出される物質の種類や濃度には季節的な変動がみられた.変動の有無や程度は,調査地点によっても,また物質によっても異なることが示された. 本研究によって,上下水道の普及率が100%である都市域においても,上下水道からの漏水が主要な地下水涵養源の1つであることが実証された.地表面が高度に被覆された都市域においては,量の観点からは,上下水道からの漏水が重要な地下水涵養源として機能している一方,質の観点からは,下水漏水が地下水の汚染源となっている実態が明らかとなった.
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