研究課題/領域番号 |
24651024
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小穴 こず枝 信州大学, 医学部, 助教 (60115334)
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研究分担者 |
川上 由行 信州大学, 医学部, 教授 (90283275)
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キーワード | 雨水貯留水 / 細菌汚染制御 |
研究概要 |
平成24年度実施の一般家庭の雨水貯留水の細菌学的汚染状況調査で、培養およびPCR法によりレジオネラ属菌が検出されたことより、雨水貯留槽内の細菌による健康被害の防止策の早急な対応が必要と考え、本年度は細菌に対する殺菌活性を示すアースプラスをコーティング加工したビーズを用いた雨水の細菌汚染制御法の新規開発とその有用性の実証的評価を行った。 前段階として、雨水貯留槽と類似した環境下でのレジオネラの制御を実験的に評価した。雨水100ml中のレジオネラに対する殺菌効果はビーズ投入量0.2g以上で認められた。投入後の処置は、静置より振盪の方がより殺菌効果が高く、遮光中での効果も認められた。殺菌効果の速効性が認められたのは投入後約1か月で、その後は急激な菌数減少はないが約3か月後も効果の持続性が確認された。 次に住宅に設置された雨水貯留槽に適用し、実際の制御効果を評価した。24年度細菌学的汚染状況調査を実施した家庭の中で7戸に協力を依頼した。内1戸は貯留槽の設置変更があり中断した。アースプラス加工ビーズをカラム型とチューブ型の2種類のケースに充填して、ビーズ充填量は250gと500gとした。採水はビーズ投入1週間前、投入日の投入直前、翌日、および1・2・3・4週間後の計7回行い、pH・COD・レジオネラ属菌数・大腸菌群数・従属栄養細菌数を測定した。1戸には許可を得てビーズ投入直前にLegionella pneumophila ATCC 33215株菌液を添加したが、250gと500gいずれも投入翌日以降の培養では検出されなかった。レジオネラ属菌・大腸菌群・従属栄養細菌に対する抗菌効果は250gと500gいずれも翌日に認められ、カラム型よりもチューブ型で高い抗菌効果が得られた。その後の抗菌効果の持続性も認められたが、前段階のin vitroの実験のような明らかな菌数の減少を示すことはなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に引き続き25年度も雨水貯留水の細菌学的汚染状況調査を継続する予定であった。しかし、24年度にレジオネラ属菌が検出されたことより雨水貯留槽内の細菌による健康被害の防止策の早急な対応が必要と考え、本年度は細菌汚染制御法の開発とその有用性の実証的評価に専念した。継続調査ができなかったため、気象条件と細菌学的汚染状況の年次的変動の評価はできなかったが、24年度に関して統計学的解析を行った。 本年度はアースプラスをコーティング加工したビーズを用いて細菌汚染制御への応用を試みた。前段階としての雨水貯留槽の類似環境を想定したin vitroでの実験は、室内での実験であり、順調に遂行することができた。実際に雨水貯留槽に応用するための研究は、アースプラス加工ビーズを提供している企業との共同開発によるところが大きい。アースプラス加工ビーズは直径約1~4mmであるため、設置方法、雨水との接触効率、経済性等を考慮し、網目状カラムと伸縮性メッシュチューブにアースプラス加工ビーズを充填して供試することとした。 平成24年度に実施した定期的な採水以上に本年度は頻繁な採水が必要であったが、それにも拘わらず協力を得ることができたのは、前年度での採水において協力家庭との間に信頼関係を築くまでに至ったことによる。また、昨年度の調査結果は安曇野市役所を通じて協力家庭に送付していただいたが、安曇野市との連携も研究の進展には欠かせなかったと考える。 雨水貯留槽内の雨水は、微生物の他に環境中からの様々な物質の混入により汚染され、また、雨水の使用量や気象条件にも左右され、それぞれの家庭での雨水貯留槽内の雨水の汚染状況も異なり、環境中での研究を難しくしていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
雨水貯留槽内の雨水は、細菌等の微生物の他に、屋根・雨どい、また環境中からの様々な物質の混入により汚染されている。また、雨水の使用量や気温・降雨量等の気象条件にも左右されるが、雨水中の何らかの有機物やアースプラスで分解されない物質などがアースプラス加工ビーズに吸着し、表面を覆っていることが、殺菌効果に影響していると考えられる。雨水貯留槽内の雨水の細菌汚染制御法としてアースプラスをコーティング加工したビーズの応用には、単純な細菌汚染制御だけでは解決できない点がある。 今後、殺菌効果に影響を及ぼすビーズに吸着している物質の除去方法を考案し、その後の殺菌効果について検証する。また、アースプラスの他に貯留槽中の有機物等を除去する方法を検討し、一緒に投入することにより雨水貯留槽中での十分な効果を発揮し、アースプラスによる制御法の効果を高める方法を考案する。 また、殺菌作用を高める効率の良いアースプラス加工ビーズの充填方法、雨水貯留槽内への設置方法の再検証を行う。
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