研究課題/領域番号 |
24651029
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
村上 和仁 千葉工業大学, 工学部, 教授 (90316810)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイクロコズム / 生態系影響評価 / 移入種生物 / バイオレメディエーション |
研究概要 |
現在,わが国ではGMO(Genetically Modified Microorganisms)の非閉鎖系での利用はなされていないが,バイオレメディエーションなど環境修復の分野で有用なGMOが開発されたり,海外から輸入されるなどして,利用されていく可能性が高まっている.しかしながら,非閉鎖系に放出されたGMOが遺伝情報の垂直・水平伝達を含めてどのような挙動を示し,既存の生態系の生物多様性にどのような影響を与えるかについては十分な検討がなされていない.本研究では,非閉鎖系にて利用されるGMOを既存の生態系への移入種生物とみなし,遺伝子操作の際に広く利用されるベクタープラスミドである非伝達性のpBR325をモデルとして,自然生態系を構成する重要な因子である生物間相互作用がpBR325の細菌間水平伝達に如何なる影響を及ぼすかについて,実験的検討を行った. 得られた成果は以下のとおりである.1) M.aeruginosaの代謝産物は,同種のみならず異種の細菌間においても,非伝達性プラスミドであるpBR325の伝達頻度を増加するように作用し,植物プランクトンの代謝産物はGMOの生残に対して正の効果を与えることが示された.2) Tetrahymena sp.の捕食作用により,pBR325の保有の有無にかかわらず,いずれの細菌も減少し,動物プランクトンの捕食作用はGMOの生残に対して負の効果を与えることが示された.3) 自然生態系では,生産者としての植物プランクトンと消費者としての動物プランクトンが共存して系を構築していることから,GMOの生残は生物間相互作用の複合的な影響により支配されるものと考えられた.4) 次年度は,より複雑な生物間相互作用を有するマイクロコズムシステムを用いて検討を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,非閉鎖系にて利用されるGMOを既存の生態系への移入種生物とみなし,遺伝子操作の際に広く利用されるベクタープラスミドである非伝達性のpBR325をモデルとして,自然生態系を構成する重要な因子である生物間相互作用がpBR325の細菌間水平伝達に如何なる影響を及ぼすかについて,実験的検討を行った. 当初想定した達成目標と進捗状況を比較すると、達成度については概ね初期の目標を達成し、順調に進展していると考えている。得られた成果については、逐次、学会発表や論文発表にて情報発信している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、生物間相互作用の重要な位置を占める捕食‐被食関係に着目し、消費者(捕食者)である動物プランクトンとして、原生動物繊毛虫類Cyclidium glaucoma、Tetrahymena pyriformis、Colpidium campylum、後生動物ワムシ類Philodina erythrophthalma、貧毛類Aeolosoma hemprichiを用い、動物プランクトンの捕食作用がプラスミドDNAの細菌間水平伝達に如何なる影響を及ぼすかについてサブシステムを用いて検討する。また、分解者である細菌類として、標準マイクロコズムシステムを構成するPseudomonas purtida、Bacillus cereus、Acinetobacter sp.、Colyneform bacteriaの4種を用い、基質を巡る細菌間競争がプラスミドDNAの細菌間水平伝達に如何なる影響を及ぼすかについてサブシステムを用いて検討する。 さらに、手賀沼から採取した湖水と底泥を充填したマイクロコズムシステム(モデルエコシステム)を構築し、複雑な生物間相互作用が存在する場における組換え細菌および組換え遺伝子の挙動解析ならびに土着微生物に及ぼす影響評価のための評価システムの構築を試みる。 並行して、組換え遺伝子の拡散に関する数式シミュレーションおよび遺伝子組換え細菌の増殖に関する数式シミュレーションの開発を進め、培養実験にて得られたデータを逐次シミュレーションに反映させていく。 得られた成果に関しては、積極的に学会発表および論文発表をおこない、広くディスカッションの場を求めることとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度総額1,200,000円のうち、消耗品費950,000円、旅費200,000円、その他50,000円を計上している。前年度に引き続き、実験研究を進め、論文投稿、学会発表などで積極的に情報発信していくこととしている。
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