研究課題/領域番号 |
24651029
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
村上 和仁 千葉工業大学, 工学部, 教授 (90316810)
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キーワード | 標準モデル微生物生態系 / マイクロコズム / 構造パラメータ / 機能パラメータ / 環境影響評価 |
研究概要 |
マイクロコズム構成生物の個体数からの評価・解析だけではシステム全体の生態系機能に着目した影響を評価するためには不十分である.そのためフラスコマイクロコズムでのP/R比に及ぼす影響を把握することで,外来種や有毒物質等の外部負荷が自然生態系にどのような影響を及ぼすかが生態系機能の側面からも予測可能となる. 本研究ではフラスコサイズのGnotobiotic型マイクロコズムの生物相とP/R比を測定し,既往の研究結果であるNaturally derived型マイクロコズム,Stress selected型マイクロコズムにおける生物相とP/R比の測定結果から,マイクロコズムの生態系機能の比較評価および生態学影響評価の有効性の解析を行った. その結果、システムとして生態系全体に及ぼす影響を評価するためには,マイクロコズム内が安定している状態が望ましい.生物相とP/R 比(光合成による生産/呼吸量の比)の評価結果から,各タイプのマイクロコズムのP/R比は安定系である1に収束するが,Stress selected 型マイクロコズムは環境水を接種後,不安定な状態が続くことが示された.また,Naturally derived 型マイクロコズムも生産者,捕食者,分解者は確認できるが,各フラスコで系が安定しない結果となった.以上から,Gnotobiotic 型のN type マイクロコズムは,Stress selected型マイクロコズム,Naturally derived 型マイクロコズムよりも生産者,捕食者,分解者が安定的(恒常的)に確認でき,各フラスコ間で生物相と呼吸量がともに一致する高い安定性と再現性が示され,移入種問題や汚染物質を対象とした生態系機能に着目した環境影響評価を行う上でのツールとして有効であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではフラスコサイズのGnotobiotic型マイクロコズムの生物相とP/R比を測定し,既往の研究結果であるNaturally derived型マイクロコズム,Stress selected型マイクロコズムにおける生物相とP/R比の測定結果から,マイクロコズムの生態系機能の比較評価および生態学影響評価の有効性の解析を行った. 当初想定した達成目標と進捗状況を比較すると、達成度については概ね初期の目標を達成し、順調に進展していると考えている。得られた成果については、逐次、学会発表などで情報発信している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、生産者・消費者・分解者からなり、高い再現性と系の安定性を特徴とするホールシステムであるGnotobiotic型マイクロコズムを用いて、遺伝子組換え細菌を導入した場合の消長および土着生物の挙動から生態系影響評価を試みることとする。測定・分析項目としては、構造パラメータとして生物相の個体数計測、機能パラメータとしてDO測定によるP/R比(生産/呼吸の比)とする。遺伝子組換え細菌のみならず、バイオレメディエーションにおけるトップダウン/ボトムアップによる生態系制御の観点から、一次捕食者である原生動物繊毛虫類Cyclidium glaucoma、最上位捕食者である後生動物貧毛類Aeolosoma hemprichiを添加導入した場合の影響評価についても検討する。 さらに、生産者である緑藻類Chlorella sp.および糸状藍藻類Oscillatoria sp.を添加導入した場合についても同様に影響評価を試み、データの蓄積を図る。 並行して、組換え遺伝子の拡散に関する数式シミュレーションおよび遺伝子組換え細菌の増殖に関する数式シミュレーションの開発を進め、培養実験にて得られたデータを逐次シミュレーションに反映させていく。 最終的には、遺伝子組換え細菌および組換え遺伝子の環境中での動態をシミュレートすることができる数理解析モデル式を確立し、数理モデルと培養モデルのハイブリッド化によるモデルエコシステムを用いた環境影響評価試験手法の高度化を図ることとする
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