研究課題
本研究は、良質な地下水に恵まれている岩手県大槌町を主な対象地域とし、多元素安定同位体を用いて、同町の震災復興に有益な地下水モデルを提供すること、さらに日本各地で行われている地下水保全に関する水質診断ネットワークの萌芽を形成することを目的としている。平成26年度は、これまでに同町および関連地域で採取した試料の分析と共に、分析データの再検討および解析を行った。その結果、大槌町の河川水質は地質、地理・地形(沿岸からの距離と標高)によって変化すること、さらに沿岸域自噴水との水質比較から、地下水の起源は、大槌川と小鎚川に加えて背後の城山にあることが明らかとなった。この3種類の地下水は、流動に伴う堆積物との反応により水質変化するものの、津波による塩水影響は見られなかったことから、地下水は2年程度で沿岸域まで達していることが明らかとなった。この成果は、大槌町で開催した市民シンポジウムで報告したが、愛媛県西条市では、地下水流動をさらに明らかにする上で鍵となる地点において、市と連携したモニタリング研究を開始している。また平成25年度の日本水大賞の対象となった福井県の大野市においては、同様な水質マップ作成を市および小学校の環境教育と連携して開始している。大槌町では、本研究によって得られた成果を基盤情報にして、町のシンボルであり、津波被害地域で新たな発生したイトヨと湧水との関係について、安定同位体を用いた研究が始まっており、水質マップを基に湧水研究のネットワーク化が生まれている。
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Applied Geochemistry
巻: 50 ページ: 142-149
doi.org/10.1016/j.apgeochem.2014.02.013