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2012 年度 実施状況報告書

きのこ類・地衣類の放射性物質蓄積特性と動向の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24651043
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関筑波大学

研究代表者

柿嶌 眞  筑波大学, 生命環境系, 教授 (40015904)

研究分担者 保坂 健太郎  独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究員 (10509417)
阿部 淳一・ピーター  筑波大学, 生命環境系, 助教 (40292510)
大村 嘉人  独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究員 (40414362)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード放射性セシウム / 環境モニタリング / 菌類 / 地衣類 / きのこ / 植物寄生菌 / 菌根菌 / 腐生菌
研究概要

福島第一原子力発電所の事故後、広範囲に放射性降下物が拡散し、自然界における放射性物質の動向を解明するため、本研究では2011年4月-2013年3月、きのこ類、地衣類、植物寄生菌類を茨城県(主につくば市)、福島県、栃木県、宮城県、山梨県、北海道から合計297標本、137種を採取し、Ge半導体検出器を用い、放射性Cs濃度を測定した。その結果、おもな調査対象であったつくば市では2011年秋に発生したきのこ類では菌根菌のフウセンタケの濃度が最高であったが、2011年4月-6月に採集した木材腐朽菌のスエヒロタケ、菌根菌のツチグリの濃度の方が上回った。また、2012年秋は137Csが、2011年秋とほぼ同様の値に対し、134Csはほぼ半分に減少した。菌根性より腐生性きのこの方が、2011年秋より2011年春に採集したきのこの方が濃度が高い傾向がみられた。地衣類は、樹幹着生の地衣類コカゲチイ以外の3種は今回調査したきのこよりも放射性Cs濃度を多く蓄積していた。2011年6月に採取したコンクリート上の地衣類Phaeophyscia spinellosaと樹幹生の地衣類シロムカデゴケは2011年4月や2011年10月に採集した試料より値が高くなったが、2011年10月以降、値が減少した。しかし、2012年では、減少速度が劣れ、やや安定化している。植物寄生菌のさび病菌では罹病葉と健全葉には放射性Cs濃度に傾向は認められないが、ツツジのもち病菌では乾燥重量で罹病葉の方が健全葉より2倍高かった。事故から2年間の環境モニタリングの結果、つくば市では概ね減少している傾向が見られるが、今後はそれほど急激に減少せず、安定化すると考えられる。なお、福島県、栃木県、宮城県で現在も非常に高い値が測定されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究によって放射性降下物が低濃度のつくば市でありながら、きのこ類および地衣類は放射性物質を高濃度に蓄積することが明らかになった。また、事故から2年経過し、放射性物質は土壌に存在し、きのこに吸収され、蓄積するため、今後なかなかきのこの放射性物質濃度の値が減少せず、半減期を迎えない限り、循環していると考えられる。
本研究では初めて植物寄生菌による放射性物質の蓄積について調査した。その結果、ツツジのもち病菌は肥大した罹病葉に2倍の放射性物質を蓄積することを初めて証明された。しかし、さび病菌(調査対象3種)、ラン科植物菌根(調査対象1種)では著しい蓄積は認められなかった。多少なり、新規の成果もあったので、目的に達成していると考えている。

今後の研究の推進方策

本研究では定期的なきのこ類と地衣類の環境モニタリングの重要性が明らかであるが、今後、特に森林におけるバイオレメディエーションに利用可能なきのこ類の探索も必要である。そのため、次年度は菌根性のきのこ数種を中心に放射線マップを用い採取をすることを目的としている。また、放射性物質のホットスポットになり得る地衣類の調査対象の種数を増やし、自然界に与える影響についても調査をしていきたい。植物寄生菌では種数を増やし、調査を続けていく予定である。もち病菌については罹病葉の組織内での放射性物質の動態をNano SIMSなどで観察することを考えている。利用可能なきのこ類の探索を効率良く行うためには、菌類がどのような機構により放射性CSを蓄積しているかを細胞レベルや分子レベルで解明することも必要であると考えている。

次年度の研究費の使用計画

次年度の消耗品の購入に使用する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件)

  • [雑誌論文] Concentration of radionuclides in lichens following the Fukushima Nuclear accident2013

    • 著者名/発表者名
      Ohmura,Y., K. Hosaka, T. Kasuya, J. P. Abe, M. Kakishima
    • 雑誌名

      The Lichenologist

      巻: 45 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [学会発表] Environmental biomonitoring of radiocesium accumulation by mycorrhizal and saprobic fungi collected in an area with lower fallout after the accident in Fukushima I NPP.2013

    • 著者名/発表者名
      Abe, J.P., K. Hosaka, Y. Ohmura, T. Kasuya, M. Kakishima
    • 学会等名
      7th International Conference on Mycorrhiza
    • 発表場所
      New Delhi, India
    • 年月日
      20130106-20130111
  • [学会発表] 菌類放射能ネットワーク(仮称)の発足と今後の展望2012

    • 著者名/発表者名
      保坂健太郎・大村嘉人・柿嶌眞・阿部淳一・糟谷大河・後藤康彦・野村貴美・桧垣正吾・根田仁・広井勝・江口文陽・柴田尚・石井弓美子・野原精一
    • 学会等名
      日本菌学会第56回大会
    • 発表場所
      岐阜市、岐阜大学応用生物科学部
    • 年月日
      20120526-20120527
  • [学会発表] つくば市におけるきのこ類および地衣類の放射性セシウム濃度の動向2012

    • 著者名/発表者名
      阿部淳一・保坂健太郎・大村嘉人・糟谷大河・柿嶌眞
    • 学会等名
      日本菌学会第56回大会
    • 発表場所
      岐阜市、岐阜大学応用生物科学部
    • 年月日
      20120526-20120527
  • [学会発表] 富士山の野生きのこに含まれる放射性セシウム濃度2012

    • 著者名/発表者名
      柴田尚・桧垣正吾・後藤康彦・奈良俊彦・保坂健太郎・野村貴美
    • 学会等名
      日本菌学会第56回大会
    • 発表場所
      岐阜市、岐阜大学応用生物科学部
    • 年月日
      20120526-20120527
  • [学会発表] 福島県郡山市、いわき市より採取した野生きのこの放射性セシウム含量2012

    • 著者名/発表者名
      広井勝・桧垣正吾・後藤康彦・奈良俊彦・保坂健太郎・野村貴美
    • 学会等名
      日本菌学会第56回大会
    • 発表場所
      岐阜市、岐阜大学応用生物科学部
    • 年月日
      20120526-20120527
  • [学会発表] 菌類研究者ネットワークの活用ときのこ・地衣類を用いた除染の可能性2012

    • 著者名/発表者名
      保坂健太郎・大村嘉人・柿嶌眞・阿部淳一・糟谷大河・後藤康彦・野村貴美・桧垣正吾・根田仁・広井勝・江口文陽・柴田尚・石井弓美子・野原精一
    • 学会等名
      第1回環境放射能除染研究発表会
    • 発表場所
      福島市、パルセいいざか
    • 年月日
      20120519-20120521
  • [学会発表] つくば市における地衣類から検出される放射性セシウムの変遷2012

    • 著者名/発表者名
      大村嘉人・保坂健太郎・阿部淳一ピーター・糟谷大河・柿嶌眞
    • 学会等名
      第1回環境放射能除染研究発表会
    • 発表場所
      福島市、パルセいいざか
    • 年月日
      20120519-20120521
  • [学会発表] つくば市におけるきのこ類から検出できる放射性セシウムの変遷2012

    • 著者名/発表者名
      阿部淳一ピーター・保坂健太郎・大村嘉人・柿嶌眞
    • 学会等名
      第1回環境放射能除染研究発表会
    • 発表場所
      福島市、パルセいいざか
    • 年月日
      20120519-20120520

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公開日: 2014-07-24  

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