研究課題/領域番号 |
24651043
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柿嶌 眞 筑波大学, 名誉教授 (40015904)
|
研究分担者 |
保坂 健太郎 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究員(Researcher) (10509417)
阿部 淳一・ピーター 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40292510)
大村 嘉人 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (40414362)
|
キーワード | 放射性セシウム / 環境モニタリング / 菌類 / 地衣類 / きのこ / 植物寄生菌 / 菌根菌 / もち病菌 |
研究概要 |
福島第一原子力発電所の事故から3年経過し、自然界における放射性物質の動向を解明するため、平成24年度から引き続き、きのこ類、地衣類、植物寄生菌類を茨城県(つくば市を中心に)、福島県、栃木県、宮崎県、千葉県などから平成25年度で合計317サンプルを採集し放射性物質の濃度を測定した。きのこ類では腐生性よりは菌根性、腐植土が多いアカマツ林よりは砂質が多いアカマツ林の木のきのこの方が高濃度の傾向を認められる。また、平成24年度よりも傾向として放射性セシウムの濃度の減少速度がさらに劣れ、安定化している。地衣類ではクロムカデゴケ属1種を定期的に春と秋に同じ場所から採集し、測定している。その結果、2013年10月でこの地衣類は放射性Cs137濃度が2011年4月のおよそ半分に減少した。しかしながら、2013年8月につくば市内における24ヵ所の公園の調査した結果、1ヵ所の公園ではケヤキの樹幹上の地衣類シロムカデゴケでは非常に高濃度の放射性Cs137濃度が測定され、3年経過しても地衣類における放射性セシウムの蓄積が現在も著しく高いことが判明した。平成24年度に植物寄生菌類ではサツキもち病菌の罹病葉が健全葉より放射性セシウム濃度が2倍増大していることが明らかになり、平成25年度は追試した結果、前年度と同様、罹病葉は健全葉より2倍高かったが、各罹病葉サンプルの放射性セシウム濃度を平成24年度のサンプルよりおよそ半減していた。また、福島県の公園で採集したサンプルの周辺では土壌表面の除染作業の影響によって減少したと考えた。全般的に共通する放射性濃度の傾向として、セシウム134の半減期を迎え、セシウム134の放射線濃度が急激に減少していることが、平成25年度の大きな特徴であると挙げられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハラタケ目のきのこは、種数が多く、種間の生態がかなり異なる上、発生は、子実体形成完了から多くの場合、数日間で分解され、消滅し、また、発生場所は必ずしも同所的ではないため、自然界で放射性物質の動向を追うには決して適していない。そこで、今回はなるべく多くのきのこサンプルを採集し、採集場所と採集時期を明確にした上、同種のきのこの放射性セシウム濃度の比較をすることに目的にしているが、まだ各種において比較するには十分採集されていないと考えている。ある程度の傾向が判明してきているが、例外的なサンプルも多く、今後データの解析方法に工夫が必要であると考えている。しかし、きのこに対し地衣類とサツキもち病菌における放射性セシウムの蓄積の動向の方がわかりやすい。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の放射性セシウムの動向を推測するには、きのこについては続けてサンプルを増やし、採集数が多いきのこの種について放射性セシウムの蓄積の傾向について考察していくことが望ましいと考えている。また、地衣類とサツキもち病罹病葉については組織内の放射性セシウムの分布を二次元高分解能二次イオン質量分析装置(Nano-SIMS)による解析が必要である。これによって、地衣類およびもち病罹病葉における放射線セシウムが蓄積している部位が観察でき、蓄積のメカニズムを解明できると考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
2014年3月に本研究で採集・調査出張の予定を計画していたが、例年より気温が低く、次年度に出張を延期することにした。 次年度早々に現地調査を予定しているため、寮費に当てる。
|