研究課題
福島第一原子力発電所の事故から4年間経過し、自然界における放射性物質の動向を解明するため、平成23年から茨城県(つくば市を中心に)、福島県、栃木県、宮崎県、千葉県などできのこ類、地衣類、植物寄生菌類の生物モニタリングを行なっている。ここまで800サンプルのうち、平成26年度では66サンプルを採集し、放射性物質の濃度を測定した。きのこ類では腐生性よりは菌根性、腐植土が多いアカマツ林よりは砂質が多いアカマツ林のきのこの方が高濃度の傾向が続けて平成25年度でも認められた。また、平成25年度よりも傾向として放射性セシウムの濃度の減少速度がさらに劣れ、安定化していることも再確認した。大学構内の建物の壁に岩生地衣類のクロムカデゴケ属1種を定期的に春と秋に同じ場所から採集し、測定している。その結果、平成26年12月でこの地衣類は放射性Cs137濃度が平成23年4月のおよそ半分に減少した。しかしながら、平成24年から現在までCs137濃度が6000-9000 Bq/Kgで安定しており、採取位置により差異は認められたが、大きな減少は認められない。したがって、4年経過しても地衣類は放射線量のホットスポットとして認識するべきであるが、地衣類のバイオマスは少なく、空間放射線量を上昇する恐れは少ない。平成23年度に植物寄生菌類ではサツキもち病菌の罹病葉が健全葉より放射性セシウム濃度が2倍増大していることが明らかになり、平成26年度は調査した結果、以前2年間と同様、罹病葉は健全葉よりおよそ2倍高かったが、各罹病葉サンプルの放射性セシウム濃度を平成25年度のサンプルとほぼ同様であり、安定期に入ったと考えている。全般的に共通する放射性濃度の傾向として、調査した菌類では放射性C137は安定期に入り、急激な低下は認められなかった。
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Journal of Environmental Radioactivity
巻: 141 ページ: 38-43
10.1016/j.jenvrad.2014.11.014