研究課題/領域番号 |
24651045
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
益谷 央豪 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (40241252)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | DNA損傷トレランス / 細胞周期チェックポイント / DNA損傷 / DNA修復 / DNA複製 |
研究概要 |
細胞は、DNA損傷によるDNA複製の阻害に対して、DNA複製を負に制御してDNA修復を促す細胞周期チェックポイント機構と、ゲノム上に損傷を残したままDNA複製を行うDNA損傷トレランス機構を備えている。DNA損傷トレランスは、損傷乗り越え複製とテンプレートスイッチと呼ばれる2つのサブ経路よりなり、これらは、PCNAのモノユビキチン化とポリユビキチン化により制御されると考えられている。本年度は、試験管内のユビキチン化反応再構成系を構築し、ヒトタンパク質によるポリユビキチン化反応を解析した。その結果、従来はモノユビキチン化反応に引き続き、順次ユビキチンが付加されることによりポリユビキチン鎖が形成すると考えられていたが、あらかじめE2上に形成されたポリユビキチン鎖が直接PCNAに付加される可能性が強く示唆された。一方で、細胞レベルにおけるPCNA翻訳後修飾と細胞周期チェックポイントとの連携についても解析を行った。内在性のPCNAの発現をsiRNAにより抑制し、siRNAに耐性の外来PCNAを導入したヒト細胞株におけるDNA損傷応答を調べた。その結果、被翻訳後修飾部位である164番目のリジンをアルギニンに置換したPCNA[K164R]変異体を導入した細胞株では、紫外線に感受性を示し、また、チェックポイント応答が長時間にわたって持続していた。DNA損傷トレランスと細胞周期チェックポイントとの連携機構の解析系を構築できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無細胞系における分子メカニズムの解析により損傷乗り越え複製と他のDNA損傷トレランスとの新規制御メカニズムの存在を示唆するなど、すでに一定の成果を挙げている。さらに、ヒト細胞系における解析にも着手し、DNA損傷トレランスと細胞周期チェックポイント機構との連関を示唆する予備的な知見を得ており、新規機構を解析する系を構築できたと考える。次年度に新規の成果を挙げる基盤を構築できたと期待でき、当初の計画に沿って解析を進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
PCNAの翻訳後修飾の分子機構の詳細な解明を進めると同時に、その生理的意義について、特に、DNA損傷トレランスと細胞周期制御機構との連携に着目した解析を進める。すでに構築した独自のヒト細胞系を用いて、細胞周期チェックポイントの活性化と不活性化と損傷乗り越え複製の活性化と不活性化の相互の関係を解明していくことにより、新規の連関機構の発見につなげられると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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