研究課題
本研究は、放射線(あるいは化学変異原)の生物モニタリング系開発を目指している。野外での飼育に適したメダカを使用し、どこにでも設置できる簡易で、かつ鋭敏なin vivo モニタリング系の樹立が最終目標である。放射線を感知し、恒常的なレポーター遺伝子(蛍光色素遺伝子)発現のスイッチをオンにできるような遺伝子改変メダカを作製するのが基本原理である。この様なレポーター系で一番問題になるのはバックグラウンドであるが、スイッチ・オンを多段階に制御する事によりバックグラウンドレベルの抑制を行う事を計画した。また、損傷応答・修復に関わる遺伝子変異体を用いる事により検出感度の鋭敏化を行う。本研究では、1)遺伝子発現誘発系コンストラクト作成、2)TG 個体樹立、3)放射線量、化学物質暴露積算量の依存性を確認、4)様々な変異体への系導入による感受性チェック、が主要ステップである。1)としては、Cre/loxP 系コンストラクトを作成し、2)TG個体の樹立を行った。3)については平成25年度の課題であり、順次開始する。4)については,これまでに我々が確立したTILLING法に加え、TALEN, CRSPR等新たな手法にチャレンジし系の確立に成功した。
2: おおむね順調に進展している
本研究の主要ステップは、1)遺伝子発現誘発系コンストラクト作成、2)TG 個体樹立、3)放射線量、化学物質暴露積算量の依存性を確認、4)様々な変異体への系導入による感受性チェック、の4点である。各項目についてその達成度を以下に記す。1)遺伝子発現誘発系コンストラクト作成;2)TG 個体樹立:Cre/loxP 系コンストラクト作成し,そのTGラインを樹立中である。当初目的は達成したが、Flp-FRT系については作成していない。その理由は、「今後の研究の推進方策」に述べる(達成度:70%)。3)放射線量、化学物質暴露積算量の依存性を確認、4)様々な変異体への系導入による感受性チェックは、当初から平成25年度の課題として計画していた。しかしながら、変異体取得の新たな手法論が開発されてきた為、その確立を行った(達成度:100%)。以上を総合して、延滞的には「概ね順調に進展している」と自己判定した。
本研究で提案している様なレポーター系で一番問題になるのはバックグラウンドである。当初、スイッチ・オンを多段階に制御する事によりバックグラウンドレベルの抑制を行う事を計画した。しかしながら、スイッチ・オンの多段階制御は、レポーターシグナルの低下を招く事から、必ずしも最適な方法ではない事に思い当った。そこで、バックグラウンドを一度キャンセルする方法を提案する事とした。つまり、予期せぬシグナルにより自然にスイッチオンになった細胞を特異的に薬剤で除去する事により、バックグラウンドゼロから環境変異源(放射線等)の影響モニターを開始するというアイデアである。大きな変更を含むものではなく、容易に構築できる事から、実現性は高いと判断している。
平成24年度はコンストラクト作成が主な研究内容であったが、平成25年度はメダカ個体の解析が主な研究内容となる。従って、飼育・解析の為の消耗品が主な支出費目となる。特に、変異を検出できた個体(体組織)のゲノム解析が必要となる。次世代シークエンサーを用いた解析を予定しており、支出に占める割合が大きくなると予想される。以下が主な使用計画である。メダカ飼料(20万円)、プラスチック器具(30万円)、酵素類(シークエンサー用試薬を含む(125万円)、英語校閲等(5万円),国内旅費(10万円)
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