研究課題/領域番号 |
24651049
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井出 博 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30223126)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 放射線 / DNA損傷 |
研究概要 |
放射線や変異原物質が誘発するゲノム損傷の「構造」と「量」は,機器分析技術の進歩により近年著しく精密化・高感度化し,生理的に意味のある暴露レベルで解析が可能になってきた。これに加え,ゲノム損傷の重篤度に関与する第三の因子として「DNA二重らせん上の損傷分布(損傷多重度)」の重要性が,理論研究およびモデル実験から示唆されている。本研究では,損傷部位の特異的標識と走査型プローブ顕微鏡による観察を組み合わせることにより,多重損傷の一般的な解析手法確立を目的として研究を行った。まず,モデルDNAを用いて損傷部位の標識方法を検討した。同一鎖に1つあるいは2つのウラシル(6~18塩基間隔)を含むオリゴヌクレオチドをuracil DNA glycosylase(UDG)で処理し脱塩基部位に変換した。次に,ビオチンを含むaldehyde reactive probe (ARP)で脱塩基部位を標識し変性PAGEで分析した。PAGE分析では,未修飾のオリゴヌクレオチドより移動度の遅い生成物が認められ,その移動度はオリゴヌクレオチドに含まれるウラシル数に依存していた。UDGのunit数およびARPとの反応時間を変化させて検討した結果, ウラシル部位を定量的にARP標識部位に変換することが可能となった。ARP標識したオリゴヌクレオチドと抗ビオチン抗体をインキュベートし,未変性 PAGEで分析することにより,可視化のための抗体の結合条件を検討している。また,損傷多重度のLET依存性を調べる目的で,X線およびCイオン線で培養細胞を照射し,細胞からゲノムDNAを精製した。損傷塩基を酵素的に脱塩基部位に変換するためのendonuclease IIIおよび8-oxoguanine DNA glycosylase処理条件を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルDNAを用いたDNA標識条件の検討は,概ね計画通り進んでいる。照射細胞から単離精製したゲノムDNAの標識については,DNA glycosylase酵素処理条件を早急に確立し可視化観察の準備を行う必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
照射細胞から単離精製したゲノムDNAの標識条件を確立し,走査型プローブ顕微鏡による観察を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究実施に必要な消耗品および研究成果発表のための旅費に使用する。
|