研究課題
核へ移行し、結合することでシクロブタン型ダイマー (CPD) の歪みを大きくする低分子の抗 CPD 抗体を構築するため、抗 CPD モノクローナル抗体産生細胞よりクローニングした重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域 (VL) をペプチドリンカーで繋ぎ、さらに VL のC末に SV40 の核移行シグナル (NLS) 続いて His-tag を付加した scFv を作製した。ペプチドリンカーとしては古典的な (G4S)3 及び (G4S)(GGRAS)(G4S)2 の2種類を使用したが、いずれも大腸菌で大量発現させた際、封入体を形成し不溶化した。封入体を6M塩酸グアニジンで可溶化し、いったんβ―メルカプトエタノールで還元した後に酸化型グルタチオンや L-Arg 存在下塩酸グアニジンを段階透析することで巻き戻しと S-S 結合形成を行い scFv を精製した。この精製した scFv について CPD との結合を ELISA assay で調べたところ、ペプチドリンカーの違いに関係なく、本来の抗体より低下していた。scFv 化による抗原結合能の低下が見られたので、本来の IgG により近い定常領域の一部を持った Fab 抗体の作製を試みた。VH-CH1-NLS-His-tag 及び VL-CL-NLS-His-tag を各々大腸菌で発現させたところ、scFv 同様封入体を形成し不溶化した。6M塩酸グアニジンで可溶化した両者をモル比1:1で混ぜ、巻き戻しと S-S 結合形成を行ったが、Fab を効率良く精製することは困難であった。そこで vivo で Fab 形成させる系に切り換え、VH-CH1-NLS-His-tag 及び VL-CL-NLS-His-tag をミエローマ細胞で共発現させるため、分泌型ベクターに各々をクローニングした。
3: やや遅れている
scFv 化した際、抗原認識部位の高次構造が本来のものとは若干異なる場合が有り、その際は抗原との結合能が低下してしまうことがしばしば観察される。VH と VL をつなぐペプチドリンカーを変えたり、あるいは VH と VL の順番を逆転させることで改善される場合もあるが、本課題では2種のリンカーを試したものの違いは見られなかった。可変領域のアミノ酸と定常領域のアミノ酸が相互に関係し尚且つ重鎖と軽鎖が相互作用して高次構造を決定するため、scFv 化して上手く行くかどうか予想するのは困難である。
すでに作製した VH-CH1-NLS-His-tag 及び VL-CL-NLS-His-tag 発現ベクターをミエローマに co-transfection し、抗 CPD Fab 産生細胞を樹立する。この細胞より分泌された Fab を精製し、以後の実験に使用する。
該当なし
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J Med Virol
巻: 85 ページ: 132-137
10.1002/jmv.23443
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