研究課題/領域番号 |
24651055
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
太田 成男 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00125832)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 損傷 / 水素分子 / 抗酸化物質 |
研究概要 |
申請者は、水素分子(H2)を新しい概念の抗酸化物質として発表した(Nature Medicine: 2007;13:688-94)。水素分子の体内への摂取によって、放射線による遺伝子の損傷を抑制し、内部被曝による障害を軽減することを目的とする。さらに、その分子機構を明らかにする。本研究は社会的貢献が大きいだけでなく、生体内での水素分子と活性酸素種の役割を明確にする学術的意義も大きい。 本年度は、予定を変更して、内部被曝への防御効果を調べる前の段階として、外部被曝への効果を検討した。その目的で、培養細胞とマウスの放射線を照射した。培養細胞の場合は、培養液に水素を溶存させ、マウスには水素水を自由摂取させた。 その結果、水素は放射線により発生する細胞内ヒドロキシルラジカルを消去することを明らかにした。 放射線照射によって、ヒドロキシルラジカルなどの活性酸素種が生じ、酸化ストレスが亢進することが知られているが、放射線照射によって上昇する酸化ストレスを軽減することを明らかにした。放射線照射によって、ヒドロキシルラジカルなどの活性酸素種が生じ、アポトーシスが促進されることが知られているが、放射線照射によっておこるアポトーシスを抑制した。放射線照射によって、ヒドロキシルラジカルなどの活性酸素種が生じ、マウスの肺の繊維化が生じることが知られているが、放射線照射によって生じる繊維化を抑制することを明らかにした。 放射線による遺伝子の損傷を調べるためのマーカーを調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、初年度から放射線の内部被曝の抑制効果を調べる予定であったが前段階として、外部被曝への効果を調べた。 本年度は遺伝子損傷の程度を以下の方法により評価できるようにした。そのため、遅れ気味ではあるが、順調に研究は進んでいる。到達した方法は以下のようである。 p53の蓄積をp53抗体で測定し、さらに、リン酸化を調べられるようにした。アポトーシスはTUNEL法で検出できるようにした。遺伝子の損傷はリン酸化SMC1抗体によって測定できるようにした。DNAの二重鎖切断は抗リン酸化H2AXによって測定できるようにした。遺伝子変異は6-チオグアニン耐性細胞の出現によって評価できるようにした。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞に137-CsCl、32-Pi(リン酸)などの放射性物質を取り込ませ、水素分子を含む培養液で培養する。遺伝子の損傷は、p53抗体、抗ヒドロキシグアニン抗体、抗リン酸化SMC1抗体、抗リン酸化H2AX抗体によって検出する。さらに、6チオグアニン耐性細胞の出現により遺伝子変異頻度の変化を調べる。遺伝子損傷によるシグナル伝達機構の解析を行う。 遺伝子損傷の程度は以下の方法により評価する。 (a)p53の蓄積をp53抗体で測定する。さらに、リン酸化を調べる。 (b)アポトーシスはTUNEL法で検出する。 (c )遺伝子の損傷はリン酸化SMC1抗体によって測定する。 (d)DNAの二重鎖切断は抗リン酸化H2AXによって測定する。(e)遺伝子変異は6-チオグアニン耐性細胞の出現によって評価する。 遺伝子損傷のシグナル系の因子のmRNA量の変動をマイクロアレイで調べる。 遺伝子損傷のより変動するリン酸化因子はそれぞれの抗体を用いてWestern blotによる測定する。 以上の結果により、放射線の内部被曝による被害を水素が防御できることを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度繰越金を含めた研究費はDNAの損傷を検出するために使う予定である。DNAの損傷を定量的に検出するために、市販品のp53抗体、抗ヒドロキシグアニン抗体、抗リン酸化SMCI抗体、抗リン酸化H2AX抗体を購入する。検出するためのウエスタンブロットに必要な装置は、すでに備えられているので購入の必要はない。遺伝子の変異を検出するために、6-チオグアニンを購入する。
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